さて、時に宗教が絡む戦争というのは戦争の歴史の裏側まで調べてみたりすると意外とグロくて気が滅入ったりするものである。かの聖女、ジャンヌ・ダルクも最後はまぁ酷い死にざまだったりするので。と、まぁそれはともかく。宗教、の中でも頓にカルト宗教というのは関わりたくないものである、かもしれない。日本においてはオウム真理教辺りだろうか。日本各地で巻き起こされた幾つもの凄惨な事件は、今や歴史の教科書の中での出来事である。
と、まぁ何を言いたいのかというと。宗教って時に怖いもの(※主観)であるという事だが。この作品はそんな宗教同士のぶつかり合いに巻き込まれていくお話なのだ。
二千年代後期に発売されたPCアダルトゲー、「幽明の求道者」。「ケネス正教」という正教側と、「アーロン寺院教団」という邪教側の戦いを描いた西洋風ダークファンタジー。この作品における特徴は、主人公から始まり全ての登場キャラが全員、勝ち残るためには命を差し出す事も躊躇わぬいわゆる「覚悟ガンギマリ」がデフォ、更にはネームドキャラ全員が肉片からでも蘇生可能な自己治癒魔法を標準装備しているので、全員死ぬ時は死にざまは苛烈。
「その名前、覚えたぜ」
そんなゲームの世界へ、主人公は転生してしまっていた。しかもケネス正教側であればまだマシだったのだが、よりにもよって邪教側のモブ、オクリ―として。生活環境は劣悪、狂うが先か、死ぬが先かという最悪な地獄。そんな中、任務で正教側の実力者、セレスティア(表紙奥)とエンカウントしてしまい、邪教側幹部、ヨアンヌ(表紙左)を機転を利かせて助けた事で、彼女に気に入られてしまう。
彼女に気に入られる事、それはどう考えても死亡フラグ一直線。更に間が悪い事に、ヨアンヌの肉体の一部を持ち運ぶ「マーカー役」専任となり、再びのセレスティアとの戦いの中、ヨアンヌはオクリ―を助けると言う不可解な行動を見せる。
「アタシ、おかしくなっちまったみたいだ」
一体何が起きたのか、その根底にあったのはオクリ―へと目覚めた恋心。もう逃げられぬ、逃がしてくれぬ。そんな彼女の変化を尋問専任の幹部、フアンキロ(表紙右)に見咎められ、尋問されるも何とか逃れた代わりに弱みを握られ。そんな中、始まるのはゲーム本編の前日譚。教祖であるアーロスの生まれ故郷、そして本編主人公が暮らす土地を取り戻すための侵攻作戦。教団を破壊する為に主人公と接触しようとする中。間諜系幹部、ポークに睨まれていたとも知らずドジをしてしまい。今度こそ絶体絶命、な尋問の機会となる。
「全部の発言が彼の中では真実なのよ」
絶体絶命、そんな中で自覚したのは自分に足りない事、覚悟。物語の外へと踏み出す事を望まぬ、それでは甘い。誰に頼るでもなく、自分の力で道を切り開くと言う事。 その為にまずは狂信を演じ、再び切り抜け。ヨアンヌに体の一部を移植する、という事を提案し彼女の肉体の一部を自分に癒着させる。
だけど彼はまだ知らぬ。今後、激戦区への配置換え、そしてさらに最悪な幹部との出会いが待っていると言う事を。
正にダークでアンダー、ゾクリとする愛が目白押しなこの作品。恋で心をゾクゾクさせたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
全員覚悟ガンギマリなエロゲーの邪教徒モブに転生してしまった件 (GCN文庫 ヘ 01-01) | へぶん99, 生煮え |本 | 通販 | Amazon