読書感想:仕事帰り、独身の美人上司に頼まれて

 

 さて、オフィスラブなんてものは果たして本当に存在するのか。女社会な職場においてのオフィスラブであるのなら存在しないのかもしれない。そしてオフィスラブ、という内容でイメージされるのはやはり同僚、または後輩なのではないだろうか。女上司、とのラブコメというのは中々見ないかもしれない。

 

 

そもそもオフィスラブ、というジャンル自体がラノベ界においては少数派と言えるかもしれない。それは何故だろうか。読者層的に、オフィスと言うのは中々縁がない所だからなのかもしれない。ではこの作品はどうなのか。この作品は、年上ヒロインとの恋愛を十八番とされる望公太先生の作品の中でも、割と年の差は大きめ、と言えるかもしれない。そして珍しく、女上司とのオフィスラブなのである。

 

「お願い・・・・・・私のこと、抱いて」

 

しかしそのラブコメは、職場ではなくいきなりのホテル、しかも肉体関係から幕を開ける。それはどういうことなのか。

 

実の兄が超有名なサッカー選手であるということ以外は特筆すべき事なし。大手出版社に新卒として採用され、営業職に就いた青年、春彦。彼の務める営業部には「女帝」と呼ばれるおよそ十歳ほど年上の女性上司、結子(表紙)がいた。新人研修の時から扱かれ、本格的に勤め始めてからも日々叱咤激励され。そんなある日、二人で飲みに行ってホテルに誘われた事で。二人の関係は幕を開ける。

 

「これから私と―――子作りだけしてくれないかしら?」

 

だが彼女は子供だけ欲しいと言う。それは何か、どういう意味か。それは自分から未婚の母になろうとするもの。 どういうことなのか。彼女は結婚する気もないし、男を作る気もない、だけど子供だけは欲しいという常識から見ればぶっ飛んでいる考え方をしていた。その考え方に、春彦もよく考えた上で、他の男に抱かれるのは嫌だと言う幼稚な独占欲もあり賛同し、ここに子供を求める二人の関係が幕を開ける。

 

会社の皆に内緒で始まる二人の関係。体の繋がりが距離を近づけていくからか、春彦は結子の色々な面に触れていく。運転が苦手だったり、実はバツイチであったり。様々な一面を知っていく。

 

そして結子もまた、春彦の事を知っていく。意外と優しい素顔を見て、彼の事がどんどん気になりだしていく。

 

 

そんな二人の関係は、幾度となく体を重ねる中で、些細な誤解によりすれ違い。その先に結子からのズレたアプローチで、また繋がっていく。

 

「実沢くんとの子供なら、きっとかわいいだろうなって」

 

兄なんて関係ない、自分が彼の事を見て来て選んだから、求めたから。二人の関係は始まった。だけどこの関係は、恋に発展してはいけない。只の繁殖のためのカップリング。

 

しかし当人同士の心は、変化を止められぬ。最初に春彦の中に恋が芽生える。では結子の中には芽生えるのか。それはまだ、分からないのだ。

 

 

本気で描いたオフィスラブ、愛がない恋が背徳感を出している、正に大人向けのラブコメであるこの作品。オトナなラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 仕事帰り、独身の美人上司に頼まれて (角川スニーカー文庫) : 望 公太, しの: 本