読書感想:公務員、中田忍の悪徳6

 

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読書感想:公務員、中田忍の悪徳5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でアリエルの我が儘に押し負け、自分の信条を曲げて彼女が望んだ悪徳を続けることを選んだ我らが主人公にして公務員、中田忍であるが。先にあとがきの内容に触れてしまうと、この作品はあと二冊、八巻で完結するらしい。ではここからは何に迫っていくのか、最終章が始まる今巻から。それは「ナシエル」と便宜上名付けられた存在の正体。敵か味方かも分からぬ存在の正体へと迫っていく事となるのだ。

 

 

「必要なことは、俺がいくらでも手助けしてやる」

 

それと同時、アリエルがこの世界に馴染む手伝いをこれからもする事に決めた事で。自動車免許を取得したり、初めての労働をしたり。周囲に驚きを齎しながら、忍の手助けを受けながら。牡蠣を食べると拒絶反応が起きると判明しながら、アリエルはこの世界に馴染んでいく。

 

その最中、アリエルと同じ職場でバイトをし始めた環が耳にしたのは、耳神様関連のお地蔵様があるという話。早速調査に乗り出す中で見つけたのは、五体の耳が根元から無くなりそれを隠された地蔵。調査の行く先々で出会うのは、コーギーを連れた重度の認知症の老人、津川。忍の推測により、かの老人は耳神様に関連する場所に現れる、そして今度は既に目的すらも忘れられた夏祭りに現れると予測され、いつもの仲間達と一緒に夏祭りに潜り込み楽しむ中、もう一度老人と向き合う事となる。

 

・・・・・・だがしかし、ここから先が中々に地獄であり、救えぬ事実が判明する。

 

「赦しを得ようなどと、考えないことだ」

 

聞き出したのは、かつてこの付近には耳神様がいた村があったと言う事。しかし津川の無自覚の密告により、かつて広島に存在した旧日本軍の毒ガス兵器製造施設へ大人と耳神様が徴発されたという事実。老人の正気を最後まで繋ぎ止めていた過去を聞き、夏休みとなり一同はそこを目指すも何も見つけられず。だが何かを感知したアリエルが空に車を飛ばし、由奈と環、アリエルと忍は瀬戸内海の名もなき島に着陸する。

 

本当に何もない、そう見えたその島の地下に隠されていたのは人間の業。耳神様を監禁し、研究材料として使い倒していたと言う痛ましい記録。アリエルが不意に落ちた穴の先で、エルフ文字らしきものを見つけるもそれ以外の手掛かりはなく。義光と徹平の救助により、彼等は本土への帰還を果たす。

 

「・・・・・・でしたらひとつ、お願いしたいんですが」

 

だが日常に戻った彼等は知らない。環が決定的な証拠を撮っているという事を。それを材料としてアリエルと密約を結んだと言う事を。

 

何もかも分からぬ中、確かに何かが動き出す今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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