読書感想:終末世界のプレアデス 星屑少女と星斬少年

 

 さて、ボーイミーツガール、というのはいつの時代も何かの物語が始まる切っ掛けとなるものである。その出会いもそれこそ星の数ほどパターンがある。古来よりのパターンであると曲がり角でぶつかったりもするし、空から女の子が降ってきたりもする。そんな前置きから分かっていただけたかと思うがこの作品もまた、ボーイミーツガールである。世界の危機の中でラブコメしていくお話なのである。

 

 

遥か昔、空から降ってきた「星屑獣」と呼ばれる獣により人類は地上を追われ、その生存圏を空に浮かぶ巨大な人工島、星浮島へと移し。星屑獣の核を生かした武器、「星輝剣」を生かし戦うも、徐々にその生存圏を減らしながら滅びへと近づいていた。

 

「星屑獣を倒して地上を取り戻す。僕は間違っていない」

 

その島の一つで暮らす、多くの戦果を打ち立て戦死した姉を持つ少年、リュート(表紙右)。姉のように、と努力し、しかし子供らしい無鉄砲さと自信過剰さに溢れた彼は「星輝剣」と同調できず。焦燥を抱えながらも藻掻く中、突然空から降ってきた少女、カリナ(表紙左)と出会う。

 

彼女に同調する方法を教わり、彼女が持っていた星輝剣「カノープス」と少しだけ同調でき。新しいチャンスである、星屑獣と戦う為の部隊の隊員を決める模擬戦に臨み、同期であるレインと激突し、勝利するも。総合的な結果を見る、という基準に阻まれ、結果的にレインが選ばれる結果となってしまう。

 

そこに襲来した星屑獣、それと戦うために飛び出し、無我夢中でカノープスと同調した事で力に振り回されながらも、何とか戦いを制し。特例、という事でレインと同じく部隊のメンバーとして選ばれる。

 

そこで待っていたのは、リュートの姉を知るひねくれ者な隊長、ギニアスと鎹の役を務めるベテランのディンを始めとする個性的な隊員たち。戦い方を即席で詰め込まれ、ギニアスに時に苛々されたり、レインとぶつかり合ったりしながら、リュートはこの部隊に居場所を得ていく。

 

だが、力を得た事で一種の増長を招いてしまったのか。更に成果を、理想を求めるその姿勢は変わらず無鉄砲さに磨きがかかり。最終試験となる、超強大な星屑獣の先遣隊への対応任務の中、一瞬の油断で仲間を失う事となってしまう。

 

その結果は挫折、当然のように心は折れて。その最中、戦いの中で不可解な様子を見せていたカリナの秘密が明かされ、部隊の面々と共に決戦に出た彼女は敵に飲み込まれてしまう。

 

「その思いだけで動いて、なにが悪いんだよ!」

 

思い出せ、己が為すべき事を。何を貫くべきか、自分は何をすべきか。大切なのは英雄になる事、なんかじゃない。自分は姉とは違う、姉にはなれない。けれど自分にはなれる。やっと見つけた己の意思を、信頼と言う名の我が儘で押し通し。青臭いけれど真っ直ぐなその思いがギニアス達を動かし、カリナの元へ送り届ける力となる。

 

「キミがいなきゃ僕の世界は終わっちゃうんだよ!」

 

それでも、と叫び続けて辿り着いた自分だけの答え。自分だけの戦う理由。世界を救うことは出来なくとも、只一人だけを救いたい。その輝きは、全てを飲み込む輝きとなる。その輝きを前に、立ち塞がれる敵なんていないくらいに。

 

王道のボーイミーツガール、こまけぇ事は良いんだよと言わんばかりに王道の展開で駆け抜けるこの作品。王道を楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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