読書感想:リコリス・リコイル Ordinary days

 

 さて、この作品の原作であるアニメ、リコリス・リコイル、通称「リコリコ」の事は画面の前の読者の皆様の中にもご覧になられていた方もおられるであろう。先日、大好評の中に完結を迎え、一種の社会現象といってもいい程に大人気であったこの作品。ノベライズ版であるこの作品、発売前に大重版を迎えていたが、発売日に購入できたという方はどれだけおられるのだろうか。私は、と言うと今、この感想を書いている時点で何となくお察しではないだろうか。と、言う訳でようやく読めたのでここから感想を書いていく次第である。

 

 

ではこの作品は、何を描いていくのだろうか。原作は千束に隠された秘密も絡めてシリアスみの強い最終決戦にもつれ込んでいったわけであるが、この作品では「喫茶リコリコ」の日常を描いている。彼女達の非日常でもあり日常の、描き切れなかった部分を描いているのである。

 

「あえて、人生残り少ない、あとわずかだ、と考えてみる、というのは」

 

そこにあるのはどんな日常であるのか。常連である早期ドロップアウト組のおじさん、土井にたきなが懸想していると勘違いした千束が余計なおせっかいを巻き起こす中、ミカがその悩みに触れてみたり。

 

「おまかせあれ」

 

任務の中で駆け抜けて、千束の不殺が故の特異な戦闘スタイルの強さをたきなが目撃したり。

 

「すっごくおいしい」

 

まかない作り、料理に対しては不器用なたきながそれでも苦労して作った不器用な料理に、千束がとびっきりの笑顔を見せて。

 

「どこか遠くに、二人だけでさ」

 

突然巻き込まれた、ゾンビ映画のようなぶっ飛んだ世界で二人で大暴れする中、ちょっとセンチメンタルな空気になってみたり。

 

「おまかせあれ♪」

 

内と外での酷い苛めに悩まされる中、実銃という力を手に入れてしまった常連客の少女を救うため、店員総出で暗躍したり。

 

 ここにあるのは「この日常には、ウラがある」、ではない。「どんなご注文も、おまかせあれ♪」の方である。正しくお菓子のアラカルトのように、様々な味のする短編が詰め込まれたこの作品。ここで出されているのは、様々な方向性の「ご注文」。だがそんな「ご注文」も千束やたきな達は賑やかに、そして完璧な形でこなしていく。だからこそ可愛く、そして愛らしく。シリアスになる前の面白さ、もう少し味わいたかったと思った事もある面白さが楽しめるのである。

 

そして、今になって読んでみると本編に繋がる部分があるのも確かである。なのでアニメ本編を見返しながら、この作品を読んでみてほしい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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