読書感想:見知らぬ女子高生に監禁された漫画家の話3

 

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読書感想:見知らぬ女子高生に監禁された漫画家の話2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、大人と言う物は年齢を重ねても、特に大きく変わらなかったりするものである。それもまた当然かもしれない。例えば学生とは違い、仕事をしている社会人であれば大幅に仕事を変えたりしない限り、毎日の景色はあまり変わらないものである。しかし、学生と言う物はそうではない。年齢を重ねれば、進学や就職で立場が変わったりするものであるのだから。

 

 

そしてこの作品のヒロインである此方は、花の高校生である。そして高校生と言うのは何事も無ければ、真っ当に進級して進学なり就職なりの選択をしなければいけない場面がやってくる。つまり、そういう事なのである。

 

「此方、もしかして、何か俺に言いたいことがあったりするのか?」

 

月日が経って三年後、成長期故にどんどんと成長している此方のリズムを漫画家が大体わかるようになってきた頃。連載も順調に三年目を迎えるも、何か言いたげな此方からその内容を聞き出す事の出来ぬ漫画家に、連載作品のアニメ化話が舞い込んでくる。

 

 だがしかし、それは運が回ってきただけのようなものであり、出資者を納得する為に成果が求められ。その為には現在連載ランキングトップの作品、「フォーリア」を倒すために、敢えて保守的なプロットを捨てる大勝負へと挑む事となる。

 

「どうかまた俺を監禁してくれ!」

 

そのためには、やはりもう一度監禁の感触を思い出すことが重要であると判断し、此方に頼んでもう一度監禁してもらい。しかし三年前とは違い、ものが増えたことにより形を変えて、幾分ソフトになった監禁が始まる。

 

 だが、この形を変えて、というのは中々に大きな要素であった。始まりの関係とは違い、今の関係の中に含まれている慕情と甘えが、気が付かぬ間に作品に影響を及ぼしていく。それをライバルであるミロに指摘され、しかしそれを捨てる事は即決で拒否し。もう一度見つめ直す事を決意した彼に、ミロは取材元の提供と言う形で力を貸す。

 

その裏、自分の進路として希望している専門学校を相談できぬ此方もまた、ハルカの力を借りて夢への道筋を見つけ。今まで忌避していた母親とも向き合い、和解はならずとも心の壁を解く。

 

「だから怒ってない。嬉しい」

 

そして年末、お互いに果たすべき事を果たして向き合って。漫画家から此方に贈られるのは、漫画家だからこその贈り物。それは決して望んでいたものではないけれど、一人のファンとしては何よりも嬉しいもの。

 

でも、もっとと望む、そんな心が生まれている。だからこそ未来、もっと二人の関係は変わるのかもしれない。

 

それを楽しみに思う、漫画家の心。ならばきっと心配する必要はないのだろう。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。