読書感想:いつも馬鹿にしてくる美少女たちと絶縁したら、実は俺のことが大好きだったようだ。

 

 さて、しばしばこの世の中に存在している言葉として「絶縁」というものがある。絶縁してしまってはそればであった縁が途切れる、もう何も話せない。例え底に何が隠れていようとも。ここで画面の前の読者の皆様には大切な事をお伝えしておこう。「大切なことは目に見えない」。失ってからでは遅いのである。一度失った信頼と言う物は繋ぎ直すには時間がかかるしそもそも繋ぎにくくなるのである。

 

 

両親を失い天涯孤独、人に優しくと言う信条を掲げれど、モデル業も務める幼馴染で小人の由美(表紙)には浮気されてフラれてしまい。周りにいる女子達に散々な目に遭わされてきた少年、優太。

 

「うるさいよ。アホ面しやがって」

 

「俺は自由になったんだ」

 

 そんな彼の張りつめていた信条の糸は、ある日耐えきれずに切れてしまう。もう耐えられぬ、ならばどうしたらよいのか。簡単だ、すべて捨ててしまえばいい。そう言わんばかりに煩わしいばかりだった周りの少女達を切り捨て、自己改革に励み。結果として新学期、優太は新たなスタートを切る。だがそれは歩き出しとしては半分だけ。本当に必要なのは、もう半分。

 

それは「相互理解」。ただ優しくあるのだけではダメ。お互いに優しくしなければならぬ、分かり合わねばならぬ。優太との絆を失って、初めてその大切さに気付いた少女達が、今度こそはとばかりに手を伸ばす。

 

「先輩が、大好きだから」

 

今まで彼の事を揶揄うばかりだった後輩、茜は彼がどれだけ傷ついていたかを悟り、自身が傷ついても構わずに必死に、飾らぬ本心を彼に届け。

 

「だから気付くのが遅れてごめんね」

 

彼を罵倒するだけだったメイド喫茶での推し、瑠璃は彼との始まり、彼が飾らぬ自分を好きでいてくれたと気付き。もう一度、飾らぬ自分で彼と共に居たいと、友人に背を押され今までできなかった謝罪を届け。

 

「私の行動は、なんの罰もなく許されることじゃない」

 

そして、実は彼の感情を引き出すために浮気したと言う嘘をついてしまった由美は、自分の過ちが起こした結果を悔い、本当に全て理解していた訳ではないと言う事実に今更ながら気づき。優太に謝罪し、また関係をリセットする。

 

 そう、傷ついてしまっても。例え罰を背負ったとしても。またやり直せる。もっと良い選択肢があったとしても、それを望んで選んだ。だからこそ手放したものをまた取り戻せた。本当の意味で前に進めたのである。

 

マイナスから始め、ゼロに至って、また始める。そんなどこか切なく、けれど優しさのあるラブコメが展開されているこの作品。優しさを味わいたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

いつも馬鹿にしてくる美少女たちと絶縁したら、実は俺のことが大好きだったようだ。 (講談社ラノベ文庫) | 歩く魚, いがやん |本 | 通販 | Amazon