読書感想:VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった



 さて、昨今のラノベ界においては「Vtuber」を題材にした作品も少しずつではあるが増えてきている。そんな作品の一つ一つに目を向けていると、同じ題材でもシリアスからコメディまで、切り口次第で如何様にも料理できると言う事が分かる次第である。では、今話題のラノベ界のVtuberとは誰であろうか。それはやはりファンタジア文庫のあの愛すべきストゼロカスの彼女だろうか。

 

 

しかし彼女は酒クズなだけで別に人間性には問題はない。ではこの作品の主役であるVtuber、エリン(表紙)はどうなのだろうか。

 

「―――要点だけまとめますと、借金でもういっぱいいっぱいなのです私は」

 

 結論から言ってしまうと、彼女は人間的には問題がない・・・筈。だがしかし彼女もまたクズである。彼女が狂ってるもの、それはギャンブル。それにより身を持ち崩し気が付いたら八桁くらいの借金をこさえて、一発逆転の為にVの者になったという割としょうもない経歴の持ち主だったのである。

 

そんな彼女の事情は、ミュートにし忘れた、否、自身の意思でミュートを切った、マイクの中の人、高校生である春人により全世界に晒され。お祭りとして人気を博してしまうのだ。

 

・・・え、前述で何を言っているのか分からない? とりあえずもう一人の主役である春人は、何故かエリンが配信中の間はマイクに意識が移ってしまい、エリンの正体がバイト先の先輩、亜理紗であるという事を知っていると言う事だけ飲み込んでおいていただければ。

 

 しかし、彼が巻き起こしたお祭りは幸か不幸か、エリンを否応なく注目の場へと押し上げ。そして「転身」という要素が功を奏し。元々エリンのファンであった春人は亜理紗と繋がり、彼女にそれとなく要望を伝え。結果として彼女を導いて、新たな出会いを作っていくのである。

 

見た目も性格も正統派な個人勢、アリスとコラボしてみれば、彼女の秘められたドSという一面を暴いてしまったり。

 

可愛い系な魔法少女系Vの者であるザクロにコラボを持ち掛けられ、知らぬ間に食われようとしていたら、借用書の公開と言う切り札が、ザクロの腐れ縁であるサラリーマン系Vtuber、誠司との意気投合を招き、結果的にザクロを食ってしまって泣かせたり。

 

ある時は質問返答で、またある時はゲーム配信で。各所に笑いの爪痕を刻み付け、エリンという存在を認知させ。

 

「私からすれば、馬鹿みたいに真っ直ぐでおかしなエリンちゃんの生き方の方が神だよ」

 

 ふてぶてしく、根底は真っ直ぐに。クズだけど、筋だけは通して。どこまでも人間らしく。憧れの人である最大手企業のトップVtuber、キリカとのコラボでも自分を曲げぬ。そんな彼女と、春人の二人三脚。それが画面越しにどこまでも、笑いの渦を広げ彼女にスパチャという収益を齎す。

 

「無慈悲過ぎる!?」

 

だが、オチがつくのもご愛嬌。それもまた魅力、なのかもしれない。

 

何も考えず笑いたい、元気になりたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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