読書感想:私のほうが先に好きだったので。2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:私のほうが先に好きだったので。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想で私はこの作品を焦げ跡のようになった恋、火傷になった恋と定義した訳であるが、当然火傷と言うものは熱いものである。そう、燻る恋と今燃え上がる恋は、同じ熱さを持っており、故に恋と恋の真ん中で揺れ惑う事となる。そして、最初からボタンを掛け違えてしまったこの三角関係は、更にボタンを掛け違え、本格的に混沌が始まるのが今巻なのである。

 

 

裏切りのキスは苦く、吐き出そうとして玄の思い出が付きまとう。本物の恋に揺れる桜子が誤爆と言うカードを敢えて切る中、連休中に小麦は玄に三日間だけ彼氏になって欲しいと依頼し。桜子と友達でいる為という願いの元、絶対に諦める為に。三日間だけ恋人となった二人が重ねるのは、ありふれた恋人のような逢瀬であり。

 

「好き。・・・・・・大好き。玄。好きなの」

 

「好き」という言葉が意味も熱も無くなる様に繰り返し、思い出も思いも封印し。三日の後、二人は分かれ玄は桜子の元へと戻っていく。

 

 小麦は忘れる為に、稲田という男子の告白を受け了承し。過去に玄と繋がりがあったという事を知った桜子はそれを武器に玄へ迫り。三人の思いが巡り、ぶつかり合う。その中にあるのは何か。それは終わり損ねた恋、そして切れもしない友情だ。

 

裏切っていると知りながらも、それでも友達でいたいと願い。だからこそ本音を曝け出せと言わんばかりにぶつかり合う。好きという思いを見せてよ、馬鹿にするなよと。鮮烈な思いと衝動が、必死に忘れようとする小麦を突き動かす。

 

 友情は縺れ、瓦解していく。桜子は傷つき、真実を知った小麦もまた傷つき。その思いはたった一人、玄へ向かう矢印となって収束していく。

 

「ねえ、わたしのものになって、安芸くん」

 

「だから、もう、私には、玄しかいないの」

 

切り捨てられてしまった、友に。だからこそ桜子にはもう、玄しかいない。

 

切り捨ててしまった、桜子も、稲田も。自分の思いに、玄の思いに気付いてしまった。だからこそ小麦にはもう、玄しかいない。忘れられぬ恋心、それが再び燃え上がる。

 

今、ここで二つの恋は薪をくべられ燃え上がり。その業火は真実を巻き込み、隠していく。何が正しいのか、本当なのか。それが見えなくなっていく。

 

致命的なすれ違いと選択のミスが連鎖し、更に混沌へと堕ちていく今巻。もう誰にも止められない。止まらない。あとはもう、墜ちる所まで墜ちるだけ。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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