読書感想:双黒銃士と銀狼姫

 

 さて、皆様は「人狼」と聞くとどんな存在を思い浮かべるであろうか。私としてはハリーポッターシリーズに登場したかの教師を思い浮かべる次第であるが。それはともかく、人狼と言うのは何処か神秘性もありながら恐怖感もある存在であると思われるが、この作品ではどんな人狼が描かれているのであろうか。

 

 

かつて古の時代に世界を滅ぼすかのような大戦が起き、荒廃した世界。この世界では「人狼」と呼ばれる人を食らう存在が人類に危害を加え、敵対していた。そんな世界の片隅で二人で生き抜き、人狼ハンターとして生き延びる兄妹がいた。兄の名をコウガ(表紙左)、妹の名をライカ(表紙右)。「双黒銃士」と異名を取る、凄腕の人狼ハンターである。

 

 日々人狼とドンパチを繰り広げ、命がけで依頼をこなす二人。だがしかし、その日々はある日終わりを告げる。簡単な筈だった「古の装具」と呼ばれる遺物の回収の筈が、二人の隠れ家に大量の人狼が襲来し。コウガに裏切り者と断じられたライカは、銃弾を受け川へと叩き落とされたのである。

 

「あなた、わたくしたちに雇われませんか?」

 

彼女を助けたのは、滅びた人狼王家の姫君、サーリャ。その護衛である最強クラスの人狼、ユリウス。忌むべき人狼の手を取るのはシャクだが今は手を取らざるを得ず、何よりもコウガへの復習の念に駆られ。一先ずの同道を決め、人狼側の勢力へと落ち延びるライカ。人類側の追跡者であるスバルとその部下であるミリアーナと手を組み、彼女を追うコウガ。

 

 だがしかし、事態はそう簡単なものではなかった。そもそもの謎、何故コウガはライカを裏切り者と断じたのか?  裏切る暇は無かったはずなのに、何故彼女を撃ったのか?

 

そこには舞台を揺るがす秘密が隠れている。ライカに隠されている秘密、それは世界の、人狼の勢力の趨勢を揺るがしかねないもの。兄であるコウガに隠されている秘密、それはライカとの血の繋がりについて。そしてその秘密を抱えているのは、二人だけではない。人類側にも、同じ秘密を抱える者が潜んでいる。

 

舞台が二転三転し幾度となくぶつかり合う中。数々の秘密が明らかとなる中。それぞれの思いが巡る中。

 

「俺が死ぬと、ライカが大泣きするらしいんでな・・・・・・!」

 

 事態の中心で巡る、コウガとライカの思い。ぶつかり合っていても、時に反目しあっていても。お互いがお互いの半身であるという、大切な思いは交じり合い、全てを終わりへと導いていくのだ。

 

古き良きノスタルジックな香りのするこの作品。最近の風潮が食傷気味な読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

双黒銃士と銀狼姫 (講談社ラノベ文庫) | 倖月 一嘉, 竹花 ノート |本 | 通販 | Amazon