読書感想:海鳥東月の『でたらめ』な事情2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:海鳥東月の『でたらめ』な事情 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想が分かりにくかった、という読者様にはこの場を借りてお詫び申し上げたい。しかしどうかご容赦いただきたい。この作品の面白さは、私の言葉では中々に言語化しにくいのである。では今巻ではどんな「嘘」との戦いが待っているのか、というとであるが。前巻では激しいバトルアクションといった感じであるが、今巻は「対話」によるバトルが繰り広げられるのであり、それぞれの思いがぶつかり合うのである。

 

 

因みに今巻では「泥帽子の一派」とはそこまで派手にぶつかり合う訳ではない。寧ろ東月とでたらめちゃん周りの人間関係が、「嘘」により更にぶっ飛んだ面子が追加されるのである。

 

でたらめちゃんの提案により、冷蔵庫に鎮座していた天ぷらが如く揚げられた鉛筆たちを住居であるマンションの裏手の空き地に埋め。でたらめちゃんという異分子も日常に加わり、ゴールデンウィークをいつも通り過ごしていた東月。

 

 しかし、新たな面倒事はすぐそばまで迫っていた。バイトからの帰宅途中、いきなりかかってきた非通知の電話。その主は埋めた筈の鉛筆。更に帰宅してみればでたらめちゃんが倒れ、敗が警護に当たっていたという妙な事態が発生していたのである。

 

全ての事態の原因と思しきは、でたらめちゃんが料理に使っていたサラダ油。それは東月が屋台を引きサラダ油を売っていた謎の女性から格安で買ったもの。事態の解決のために、謎の女性を探す事となり。とがり(表紙)と名付けられた、東月にしか見えぬ思念体と東月、そして敗というでたらめちゃん不在の妙な三人組による捜索が始まる。

 

 全ての原因となったのは、元料理人であったという過去を持つ女性、猟子。彼女の側にまるで親が如く控えるのは、サラダ油から発生した「嘘」、サラ子。「泥帽子の一派」の中核、綺羅々も彼女達のスカウトに訪れ三つ巴の事態へともつれ込み、東月と綺羅々達の陣営によるぶつかり合いが発生する中、猟子とサラ子の思いが事態の中心で巡る。

 

ずっと側に、そう願うからこそサラ子を人間にしたいと願う猟子。猟子の為、自分の幕を引こうとするサラ子。

 

「というか、こうなると分かっていなければ、誰が乗るものですか。あなたのあんな、馬鹿みたいな計画に」

 

 だがしかし、その思いを全てひっくり返し、勝手な思いで救いへと持っていく。それを為したのはとがりの身勝手、そして東月の何でもできると言う特異性。

 

前巻にも増して奇妙奇天烈な、何とも言葉にしにくい面白さが深まっていく今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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