読書感想:ロストマンの弾丸2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:ロストマンの弾丸 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この巻の感想は前巻を読まれた読者様が開かれていると言う仮定の下に書いていくので、前巻の知識があると言う前提の元に書かせていただきたい。前巻、実は自分を思ってくれていた相手、ヴィト―の遺志を受け継ぐと決めた主人公、未那。しかし、彼女は未だ未熟な存在である。自分一人では何も出来ぬ子供であり、生まれたてのヒーローである。そんな彼女はまだ大勢にとっての希望に非ず。そしてこの街、「ロストマンズ・キャンプ」には未だ多くの絶望が蔓延っているのである。

 

 

その絶望は、今まではヴィト―という巨悪の元に築かれていた一種の秩序によりある程度の制御はされていた。しかし、今はもう彼はいない。街にとっては支柱とも言える存在であった彼の喪失は、緩やかに新たな混沌を街に呼び込んでいく。

 

 その混沌は、街にありふれた歪みと化学反応を巻き起こし、新たな事件を巻き起こす。その立役者となったのはギル(表紙奥)と言う名の少年。この街にはよくいるストリートチルドレンの一人であり、子供達で寄り集まりながら細やかな暮らしを営んでいた彼。

 

大人から渡されるか細き収入に頼らざるを得ない彼等に、磯良と名のる謎の女が接触し。彼女が齎した新型の麻薬、「ブードゥ・チャイルド」による商売に一枚噛む事になり。彼女に指示されるがままに商売し、扇動されるがままに大人に反旗を翻し。そして最後にはもう不要とばかりに切り捨てられる。

 

 炎の中、全てを喪い、引き換えと言わんばかりに炎を操る力を得。何故助けてくれぬと投げかけられる言葉に未那の心はかき乱される。

 

支援者となってくれた桐乃から託された新たな装備を身に着けていても。「レイラ」と呼ばれる支援AIが手伝ってくれても。自分は弱い、何も出来ぬ。救いたいと願っても、何も出来ない。焦りが独断専行を招き、事態をより混乱させていく。

 

「それでも、私は諦めたくない」

 

だけど、それでもこの思いは変わらない。託された遺志が変化した己の願いが、胸の内で心をたきつける。

 

再び桐乃に頭を下げ、彼女の本心を解き明かし。前堂が情報を提供し、東が協力を申し出て。今度こそ、全部を救うため。再び未那は事態の解決へと向かう。

 

「大丈夫だよ。ギルの思いは、ちゃんと持っていくから」

 

全てを燃やし尽くそうとするギルと向き合い、もう一度彼に手を差し伸べ。彼に託された思いも胸に、磯良と向き合い。許せぬ悪である彼女もまた救いたいと、未那は力の限り奔走する。

 

「君が大きくなるまで、この街は私がちゃんと守ってみせるから」

 

 誰も死なせたくない、救いたい。彼女の願いは今、昇華する。彼女の理想に一歩近づく、街にとってのヒーローへと彼女を近づけていく。

 

更なる疾走感と面白さ、熱さ迸る今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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