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読書感想:負けヒロインが多すぎる!2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、この作品はマケインこと負けヒロインの物語であると言うのは前巻までを楽しまれた読者様であればお分かりであろう。杏菜も檸檬も、恋を終わらせるための一大イベントが必要であり、自身の思いをきちんと形にし、言葉にするからこそ思いを終わらせる事が出来た。では、皆様はもう最後に語られるのは誰であるかもうお分かりであろう。そう、知花である。文芸部部長である慎太郎に思いを抱きながらも、その思いが届くことは無く未だ終わり損ねている彼女である。
夏休みも終わり二学期。二学期と言うと日本においては秋であるが、画面の前の読者の皆様はラブコメにおける二学期のイベントとして、何を連想されるであろうか。
その答えの一つとして挙げられるであろう学園祭。この作品においては「ツワブキ祭」と呼ばれるイベントが迫る中。知花は祭りを切っ掛けとし引退する慎太郎から次期部長として任命されてしまう。
顧問がいないと言うそもそもの問題、「食べる読書」という出し物の用意。様々な問題が立ち塞がる中、知花を支える為に和彦は動き回る。だが、それでも頑張りすぎる知花は背負い込み過ぎて過労で倒れる事態を招いてしまう。
けれど、それでも、と。立ち上がり自身の作品に魂を込める知花。何故、彼女はそこまでするのか? それは慎太郎へと伝えたい思いがあるから。例え届かぬと心の何処かで分かっていても、砕け散るだけと何処かで確信していても。それでも伝えたい思いがある。そう言わんばかりに彼女は自身の作品に思いを込める。それはラブレター。感謝と決別の思いを込めた、彼女にしか書けぬラブレター。
「―――部長のこと、好きになってよかった」
その惜別は必然。届かぬ思いは悲しみへ変わる。だが、気丈に振る舞う知花は部長として部活を守る為に、コミュ障の自分を乗り越えようと部長としての挨拶へと挑む。
「お兄様は、彼女にどうあって欲しいと願っているのですか?」
だが、無論画面の前の読者の皆様もお分かりであろう。コミュ障というのは一朝一夕で変わるものではなく、このままだとどうなるか、なんてことくらい。何かが引っ掛かりながらもそれでも今まで通り、「何もしない」という選択を選ぶ和彦。しかし、彼の心に隠れたエゴは佳樹によって晒される。
願いは一つ、その為に貫くのは何か。それはエゴ。例え間違っているとしても関係ない。青春は間違いばかりだとしても、それは誰かにとっては正解となり得るから。
だからこそ、今回和彦は驚くべき行動に出る。傍観者を辞め、全てをひっくり返す介入を、自分に目をかけだした生徒会の前で行って見せる。
負けヒロイン達を見守る中、彼もまた成長してきたのだ。そして彼の目の前、三人の負けヒロインが揃った。
なら、ここから待つのはどんな物語なのか。それが楽しみである。
負けヒロインが多すぎる! (3) (ガガガ文庫 ガあ 16-3) | 雨森 たきび, いみぎむる |本 | 通販 | Amazon