読書感想:カーストクラッシャー月村くん2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:カーストクラッシャー月村くん1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でカーストトップでありながらカーストをぶち壊すべく日々考えを巡らせる響、というこの作品の骨子は前巻を読まれた読者様においては大体のところは理解していただけたであろう。中々恋の始まらぬ、果たして本当にラブコメなのかと問いかけてみたくなっても、仕方のない事かもしれない。ではそれは何故なのか。それは響が双子の妹である奏と疑似的な恋人関係を結んでいるからである。

 

ではもしも、その関係を一度壊してみたのならばどうなるであろうか。ここで少し考えてみていただきたい。響が一般的に視ればどんな存在であるのかを。

 

「―――あたし達って、もう付き合ってる意味なくない?」

 

 有体に言ってしまえば優良物件である。奏という存在が今までは抑止力となっていた。しかし、奏が二人にとっての幼馴染、夢瑠の帰還を知り。響を彼女の元へ行かせる為、恋人関係を打ち切ってしまったのである。

 

もうお分かりであろう。そうなれば当然、発生するのは恋のさや当て。奏に遠慮し予め許可を取ると言う忖度を起こしながらも、響の元へと告白が幾つも持ち込まれる。

 

 そんな状況を打開する為、飛び込んだのはオープンスクール委員会。誰もやりたがらない不人気な委員会に多忙を得るべく、同じく立候補したココと共に飛び込む響。しかしそこで待っていたのは、「停滞」と「諦念」であった。

 

既に生徒会が枠組みの大枠を作っているから求められるのは、それを維持する事。そして委員会と言いながら、権力は及ばぬ所にある。カースト上位者が上に立ち、その音頭で纏まり話は進んでいく。それが決して正しい事なのかも確かめずに。

 

「その方が、きっと皆―――気持ちが良いと思うので」

 

 ならばどうすべきか。マンネリを求められどもそれで得られるのは落胆のみ、自分達に出来る事はほぼ無しなこの状況からどう逆転するのか。その鍵となるのは、皮肉にも「カースト」というもの。下位が上手くすれば上位を駒とし意思を通せるという仕組みを生かし、人心を掌握し細やかな一手を響は仕掛けていく。

 

「誰かに告白するのに他の誰かの許可なんて必要ないと思うんだけど・・・・・・違うの?」

 

そして迎えた本番当日。ココから告げられた言葉が響の心を揺らす。カーストなんてものに忖度しない、いわば当たり前な行動から出た声と手が、響の前に示される。

 

まだまだ混沌は続く、そう言わんばかりに引っ掻き回してくる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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