読書感想:タマとられちゃったよおおおぉ

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 さて、玉と書いてたまと読み、命と書いてタマと読み、タマモクロスと書いて白い新妻、もとい白い稲妻と読む。そんな一部脱線している前置きはさておき、ヤクザの皆様にとっては命も大事であり、同時にメンツも大事であるというのは、任侠映画でも良く描かれる事である。

 

 

では何故こんな前置きになっているのかと言うと、この作品はバリバリの任侠モノだからである。血と硝煙が舞い散る、バリバリのアクションものだからである。

 

空高くそびえる壁にさえぎられている訳ではないが、この作品の日本には三つの国が存在していた。一つはお馴染み日本。もう一つは、「暗黒都市オオサカ」。渡航禁止区域に指定されたヤクザの支配する犯罪者の楽園。 最後の一つは、人工島「サキシマ」。オオサカの目と鼻の先にありながら、何とか治安を保たれた都市。

 

 かの島には、ヤクザを喰らう狼、「番狼」がいるという噂があった。その噂に偽りはなく。大太刀、銘を「慟哭」と呼ばれる刀を振り回しヤクザを狩る者がいた。その名は惣次。この作品の主人公である。

 

彼の振るう「慟哭」は妖刀であり、持ち主に人間の限界を超えた身体能力を授ける。

 

「「「うええええんタマ取られちゃったよおおぉぉ」」」

 

 そしてその力はもう一つ。切った人間を幼女に変えるというもの。その力で、千人殺しと呼ばれた強力な組長を幼女へ変え。スイレン(表紙)と名付け妹として早二年。穏やかな時間を過ごしていた彼の元、新たな事件の風が舞い込んでくるところからこの作品は幕を開ける。

 

惣次のバイト先の店長であるニトロから齎された案件、湊で発見された大量の出どころ不明のライフル。 その出所を追い、掴んだヤクザの影。しかし隠し場所を捜索していたところ、何故か担任である女性、湖水と出会い。更に島を守る筈の自警団に襲撃され、ヤクザに湖水を連れ去られてしまう。

 

 何故彼女を攫ったのか、その理由もわからぬままにスイレンと共に追跡した先で目撃するオオサカの歪み、犯罪都市の素顔。そして、ここから全ては大きく動き出す。自警団を骨抜きにした者の正体と対決、そして銃の出どころであるヤクザとの激突。 その最中、島を守る為の方法でスイレンと惣次は対立し、惣次は一人敵の本拠地へ乗り込み、結果として命からがら逃げだす事となってしまう。

 

失意の底に沈む彼の元へ届けられる、顔見知りの者の訃報、そしてニトロの死の現場。

 

「折れることは許さん、それだけは絶対に許さん」

 

心折れそうになり弱気に沈みそうになり。けれどスイレンがそれを許さぬ。気を張れ、悲しみをしばき倒せとケツを蹴り飛ばす。

 

そう、止まることは許されぬ。今、この島を守り抜けるのは彼等だけ。

 

「俺は組を作る」

 

 だからこそ、彼は決意する。この島を守る為、大切な者達を守る為にヤクザのやり方に手を染める事を。月下の混血の誓いにより再びスイレンと絆を結び。新たな幼女、ヒガンと実は生きていたニトロを仲間に加え。孤狼は群狼となりて仇為す者達を喰らいつくす為に立ち上がる。

 

今度はこちらから、そう言わんばかりにド派手に襲撃をかけ。銀閃と銃弾が迸る戦場で数多の敵を幼女と変え、首魁であるヤクザ、埋呉と激突する。

 

 

 正に任侠、正しくアクション。ド派手に心躍らせる、駆け抜けるような面白さがあるのがこの作品なのである。

 

熱さがあるバトルが読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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