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読書感想:見知らぬ女子高生に監禁された漫画家の話 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で漫画家と、彼の熱狂的なファンでありストーカーでもある此方の縁は結ばれ、歪にも過ぎる愛で結ばれた関係が成立してしまった訳であるが、果たしてこの関係は純愛なのか、それとも不純愛なのか、どちらなのか。その答えは画面の前の読者の皆様それぞれの感性にゆだねるとして、皆様、一つお忘れではないだろうか。漫画家、という事は必然的に関わらなければいけぬ人物がいると言う事を。
それ即ち、「編集者」。それもまた当たり前のことかもしれない。漫画家だけでは、雑誌連載までいくのは難しい。編集者との二人三脚をしなければ届かぬ場所があるのである。
夏が来て、此方に監禁される生活も終わり、二人の生活が「同棲」へと色を変える中。漫画家の心に浮かぶのは、現状への危惧。例えここに込められている思いが何であれ、この状況を目撃されるのはマズいという事。
しかし、この状況を担当編集者であるハルカに目撃されてしまい。何とか咄嗟の嘘でごまかしには成功するも、女性問題が起こらぬと確信するまでハルカが家に泊まり込むことになってしまう。
本当は嫌だけど、それでもこの生活を守る為には仕方ない。仕方なく通い妻的な生活に切り替え、漫画家の部屋を去る此方。
しかし、その心は散々に乱されていく。漫画の参考のためにデートを提案してみればハルカも記録の為に同行することになったり。ハルカの目がある以上は下手な真似も出来ず。更にはただ、自分が一番のファンであるという事だけでは出来ぬ段階へとハルカに踏み込まれていく。漫画家との打ち合わせで、自分が好きだった彼の漫画が変えられていく。自分が見たいものが、見られなくなっていく。
だからこそ、此方はハルカへと連載漫画のifルートという舞台で勝負を挑む。漫画家を想うが故に、もっと彼に自由を与える為にと彼女へと挑戦状をたたきつける。
web漫画の流行を調査したり、どんな要素がバズるのかを考えたり。試行錯誤が受け入れられぬ中、事態の打開の鍵となるのは同じレーベルの天才漫画家、折尾。臨時のアシスタントを漫画家が引き受け、此方もインスピレーションの刺激のために協力する事で。その頑張りが折尾の目に留まり、漫画がその目に届く事で。結果には届かざれど、妥協を引き出せる程の結果へと手を届かせる。
「―――まあ、編集者と漫画家が結婚するというのも、業界ではままあることですが」
しかし、ハルカが残したのは意味深な言葉。その言葉に過剰な防衛本能を示す此方を見て浮かぶ恐怖。この関係、やはりいつか決着を付けなければいけない時が来るのだろうか。
前巻とはまた違い、お仕事もの的な面白さが加わる今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
見知らぬ女子高生に監禁された漫画家の話2 (角川スニーカー文庫) | 穂積 潜, きただ りょうま, きただ りょうま |本 | 通販 | Amazon