読書感想:宅録ぼっちのおれが、あの天才美少女のゴーストライターになるなんて。2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:宅録ぼっちのおれが、あの天才美少女のゴーストライターになるなんて。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想内で私はこの作品を青春であり王道のバンドものであると評した覚えがあるが、その点は今巻ではどうなっていくのだろうか。画面の前で心配を抱かれている読者様がおられたら安心してほしい。今巻もまた、最高のバンドものであり青春ものとなっているので。

 

 

では、今巻では拓人と天音、そして「amane」の中で何が起きるのであろうか。

 

 その問いかけの答えとしては、「イカロスの翼」という神話が説明としては簡単に当てはまるのではないだろうか。太陽に近づきすぎたイカロスは翼を焼かれ、海へと堕ちた。では、期せずして天音という憧れに近づきすぎた拓人はどうなってしまうのか。つまりはそういう事なのである。

 

ロックオンライブを成功させ、目指す次の舞台は学園祭。しかし、拓人が何故か自分の音階だけを聴き取れなくなる非常事態が発生し。更には天音に迫る恋敵の影といった問題が立て続けに発生し、拓人と天音の心は揺れに揺れ、言葉に出来ぬ思いからくる苛立ちで二人の心はすれ違ってしまう。

 

 天音という才能に近づきすぎたからこそ自覚してしまう、自分の凡庸さ。その何も持たざる事態に悩み、落ちていこうとする拓人を救うのは誰か。拓人の心の内が分からず懊悩する天音を救うのは誰か。それはバンドの仲間達。今までに築いてきた絆たちなのだ。

 

「『本当の気持ち』から、目を逸らすな、小沼」

 

「・・・・・・それ、拓人も、同じ気持ちなんじゃないの」

 

今まで目をそらしてきた思い、己の根底に流れる思いから目を逸らすな。お互いに目をそらしているお互いから目を逸らすな、きちんと向き合え。そう言わんばかりに時に優しく、時に厳しく背を蹴飛ばされるように押され、二人はお互いに向き合い、お互いを見つめ合っていく。

 

 その無言の対話と触れ合いの先、新たな歌が生まれ出る。あなたの一番は、世界で一番の歌は私の歌が良い。その思いから生まれ出た「あなたのうた」。わたしのうたと対を為す、只一人だけへ向けた最高で最愛なラブソング。

 

憧れに手を伸ばすのなら本気で、もう迷わない。だからこそ、彼は学園祭の先で突き付けられた選択肢に己の答えを見せつける。憧れを以て、好きである。だからこそ、最短の未来を天秤にかけてでも選びたい答えを選び取る。

 

「私の声も、まだ知らない色んな『初めて』も、未来はもう全部、あなたとだって決めたから」

 

 それは変革への扉を開ける最後の鍵。桜色の未来へと繋がる鍵。故に、ここから始まるのである。二人の関係の第二楽章が。心繋がり響き合う未来が始まるのだ。

 

更にエモく、熱く、切なく、尊く。もう最高を通り越して最高な面白さが、瑞々しい一瞬の青春が弾ける今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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