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読書感想:神狩1〈上〉 絶戦穢土異聞 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で最早これでもかと言わんばかりに風呂敷を広げまくった、正に安井健太郎先生イズムな作品と言える今作品であるが、上巻である前巻から続く下巻では、一体どんな展開が待っているのか。広げまくった風呂敷を、少しは畳むのであろうか。
そう思われた読者様は、まだまだ甘いと言わざるを得ないかもしれない。 何故ならば、その想像は全く別方向に進んでいくからである。
もうお分かりであろう。今巻で繰り広げられるのは、前巻に輪をかけてとんでもない規模で繰り広げられる死闘に次ぐ死闘。犬も歩けば棒に当たる、という訳ではなく征十郎も歩けば死闘に当たると言わんばかりにこれでもかと繰り広げられる死闘に次ぐ死闘なのである。
前巻の最後、由井正雪を逃がしてしまい。妖魔となった彼を追う事は生半可な事ではなく、一先ずは追う事を諦め、征十郎達は穢土の片隅で店を開く陰陽師、土御門各務の元を訪れフィーアの記憶を取り戻す処置を依頼する。
しかし、そんな中で再び穢土の都に大乱が巻き起こり。穢土のお城に巣食う怨霊を核として、城をしのぐほどの大きさを持つ禍津神が生まれ出。旧知の相手である柳生十兵衛と共に事態の対処に当たる征十郎達の目の前、異界に繋がる空の扉が開き、稀人達が操る醜悪な船が船団となって襲い来る。
正に世界を揺るがすような戦い、その最中で判明するのは、それぞれの真実。
何故小夜は、禍津神を喰らうのか。
記憶を取り戻したはずのフィーアでも取り戻せなかった記憶の中、そこに何があったのか。
そして、征十郎に隠された秘密とは何か。飄々と生き、禍魂を喰らう彼の真意とは。彼の傷、その向こうに隠されたものとは何か。
「いいわ。ただし、私も一緒よ」
神話も歴史も、幻想も科学も全て交じり合い、歴史上の偉人の名を持つ者達がこれでもかと現れぶつかり合い、火花を散らす。そして簡単に散っていく。そんな中、小夜と共に征十郎は戦い抜いていく。神にも等しき力を振りかざしながら。
前巻にも増して熱く、死闘に次ぐ死闘がこれでもかと繰り広げられる今巻。もはやどこを見てもバトルである、溺れてしまう程にバトルの連続である。しかし、だからこそその疾走感が心に熱い。正に心躍り、燃える事が出来るのが今巻なのである。
前巻を楽しまれた読者様、やはり熱いバトルが好きと言う読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。