読書感想:神狩1〈上〉 絶戦穢土異聞

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 さて、前提条件としてこの作品の中では神を狩る、即ち「神殺し」が職業として成立していると言う事を、まずは共有させていただきたい。では、画面の前の読者の皆様は「神殺し」と聞くとどんな作品を想起されるであろうか。終末的な世界で、神の名を冠する獣達を狩る某ゲームだろうか。それとも、神を殺しその権能を得た「神殺し」達が時に協調し時にぶつかり合う、とあるラノベであろうか。

 

 

この問いかけに明確な正解は無いであろう。しかしこの作品は、終末世界が舞台でも、現実世界が舞台でもない。

 

 この作品の舞台となるのは「穢土」。現実の江戸時代、将軍位で言う所の家光から家綱辺りまでの時代を題材としながらも、魔法もあり、アンドロイドすらもあるというとんでもない世界観である。

 

そんな世界を脅かしながら、その魂が人の世に富を齎すものがいる。その名は「禍津神」。人の怨念や未練を喰らい成長する、文字通りの落ちた神。

 

 そんな世界の中、禍津神を殺しその素材を得る「神狩」を生業にする者がいた。彼の名は征十郎(表紙中央)。獣憑きと呼ばれる人種である少女、小夜(表紙左)を相棒に、禍津神と日々戦う者である。

 

そんなある日、討伐した禍津神の中から出てきたアンドロイドの少女、フィーア(表紙右)と出会い。記憶をなくした彼女を保護することになり。

 

更には彼の元に舞い込む、幕府の小役人である友人、虎之助からの依頼。只の連絡が途絶えた村を調査するだけの依頼。

 

 しかしその依頼は、征十郎達三人を激動の中心へと呼びこむ呼び水であり。彼の元に次々と曲者、そして死合うべき強者達を連れてくる引き金だったのである。

 

壊滅していた村で襲撃してきた伊賀の忍者たち。虎之助を圧力をかけて捕らえ何かを目論む「東印度会社」、その客分である竜の「獣憑き」、フランシス・ドレーク

 

更には、ならず者と曰く付きの武器を集め何かを目論む謎の男、由井正雪。その彼に付き従う既知の相手、那須与一

 

 そう、もうお分かりであろう。歴史上の人物の名を持つ者達が次々と舞台に上がる。そして敵として彼と向き合う。ならばそこに発生するものは何か。それこそは「死合い」、殺し合いに他ならぬ。

 

いっそ清々しい程に血と臓物が舞い散り、人の命が簡単に死んでいく。そんな激しい激突がこれでもかと、息つく間もなく繰り広げられる。

 

「なら、終わらせるしかないわね」

 

 

そんな世界の中、二人は戦う。関わってしまった事態を終わらせるために。

 

正に安井健太郎イズムとでも呼ぶべき、激闘に次ぐ激闘が繰り広げられるこの作品。

 

濃密なバトル描写に溺れたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

神狩 1〈上〉 絶戦穢土異聞 (オーバーラップ文庫) | 安井健太郎, kakao |本 | 通販 | Amazon