読書感想:俺の気も知らないで憧れの先輩が恋愛相談してくる

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 さて、隣の芝生は青く見える、なんて言うけれど、それは多分、この作品を表す言葉としては多分当てはまらないかもしれない。しかし、思春期と言うものは、感情が揺れ動く季節である、というのは間違いないかもしれない。それは移りゆくものであれば、時に何処かへと移り変わるものである、と言っても過言ではないのかもしれない。

 

 

とある高校の生徒会長を務める少女、律花(表紙)。成績優秀、容姿端麗。月に何回かモデルのバイトも務める、正に完璧なパーフェクトヒロイン。そんな彼女に懸想する少年、冬季。生徒会書記を務める後輩であり、彼女に憧れを抱きながらも届かぬ手を空振りさせるモブな後輩。

 

 しかし、そんなある日。冬季のアルバイト先に新人バイトとして律花が姿を現したところから、冬季の青春は移り変わる。しかしそれは、良い方向と言えるのか、どうなのか。

 

彼女が新人バイトとして入ってきた理由、それは冬季の同僚でもある憧れの先輩、澤野に近づきたかったから。しかし学校で見せるパーフェクトヒロインぶりとは真逆、憧れの先輩の前では空回ってばかりのぽんこつ気味。

 

 そんな彼女に澤野へ近づく為の手伝いを依頼され。彼の青春は更なる面白き方向へと踏み込んでいくのである。

 

まずは経験を積む為に、放課後デートから始め、デートの予行演習として二人で買い物に行き。更には先輩に近づく為の作戦を立てるために、律花の家に招かれたり。

 

どんどんと自分だけしか知らぬ顔が増えていく、自分しか知らぬ一面が見えてくる。完璧に思えていた彼女の、年相応の一面が見えてくる。

 

 でも、彼女が見ているのは自分ではない。そんな事実に冬季の心は揺れる。何処か危うい思いが芽生えていく。それは律花も同じ。練習と称して冬季と関わる中、今までにはない思いが芽生えていく。

 

いつも自分は、憧れの人の前では空回ってばかり。何も変わっていない、あの頃から。でも、冬季だけはそんな一面を見せても側にいてくれる。どんどんと彼しか見せていない顔が増えていく。

 

「憧れの人に頼られたら、がんばろうってなりますよ。最初に頼ってくれた時は嬉しかったですから」

 

 その思いは、三人で行った夏祭りの場で一つの結実を迎える。一つのアクシデントから悪い方向に転がり、そんな顔を憧れの先輩には見せたくなくて。それでも冬季だけは駆けつけてくれた。そして二人で見上げた花火の下、冬季の思いは一つの答えを得る。

 

その思いは、抱くには遅すぎる想いだったのか。それはまだ、分からない。けれどその思いは嘘じゃない。

 

果たして、巡り揺れる想いは何処へ行くのか。

 

繊細な心理描写が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

俺の気も知らないで憧れの先輩が恋愛相談してくる (ファンタジア文庫) | 永松 洸志, 林けゐ |本 | 通販 | Amazon