読書感想:インフルエンス・インシデント Case:03 粛清者・茜谷深紅の場合

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前巻感想はこちら↓

読書感想:インフルエンス・インシデント Case:02 元子役配信者春日夜鶴の場合 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品の一連の事態の裏に黒幕として糸を引いていた存在、「鳳仙華」こと茜谷深紅のことは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。一連の事態の裏で、何か思惑を巡らせている彼女とはいつか激突しなければならぬ時が来る、というのは皆様もお察しであったかもしれない。そう、対決である。その対決、最終決戦が繰り広げられるのが今巻なのである。

 

 

「早蕨冬美は生きていたか?」

 

「おそらくわからないままのほうがいい。特に、きみのような人間は」

 

前巻の最終局面、遂に果たされた深紅との邂逅。しかし、ひまりにとって気になったのは深紅の様子ではなく、その隣にいたかつての親友、冬美。何処か昔と変わってしまった彼女の様子を忘れられぬひまりに玲華は君は関わらぬ方が良いと言い、二人は気になりつつも日常に戻っていこうとする。

 

 しかし、新たなる不穏の予感はすぐそばまで迫っていた。その舞台となるのは、またも「RootSpeak」。一日一回、謎の指示をしてくる謎のハッシュタグが最近、世を賑わせていたのである。

 

今まではただ、平和な写真を投稿するという大喜利の筈だった、だが、突然に投稿されたのは写真ではなく、ホラー映画を皆で見るという謎の指示。その指示の裏、玲華は深紅の存在、そしてその狙いを感じ取り警鐘を鳴らす。

 

 その狙い、それは少しずつ指示を過激にしていくことによる大衆の思考の誘導。その果てにあるのは、明確な終わり。その推理の通り、少しずつ謎の指示に傾倒する者達が出現し。事態は真雪の傍にも影響を及ぼす程に、深刻さを増していく。

 

蓮水も巻き込み、夜鶴も巻き込み。対応するための策を練り始める中、年末は迫り。いよいよ下される最後の指示。それは、深紅の計画の最終段階。彼女の両親が所有するビルを舞台にした、最悪の結末を齎す為の最後の仕掛け。

 

「・・・・・・僕も役に立ちたいって思ったからです」

 

「そんじゃ行きますかぁ」

 

 それを許すわけには勿論いかぬ。故にこそ、先んじて計画を阻止しようとするひまりと玲華の元へ、夜鶴に引き連れられた真雪と蓮水が合流し。計画を阻止するための彼等の作戦が幕を開ける。

 

夜鶴と真雪が突然のコラボ配信と大規模オフ会で周囲を封鎖し。建物の中に飛び込んだひまりは冬美と向き合い、決着をつけるために戦いを繰り広げる。

 

 許しを賜ったと思い込み、人を愛するからこそ粛清者として権利を振るいたいと願う、只の「人間」に立ち向かう力となるのは何か。それは、「人間」の力。人を好きになり、絆を結び、繋がった「人間」だからこその力。

 

「だから・・・・・・そろそろ聞かせてくださいよ。ずっと待っているんですからね、僕」

 

その先、新たな季節にひまりの元に持ち込まれた新たなインシデント。だがそのインシデントは、辛い物じゃなく。未来へ進む為の、前向きなインシデントなのである。

 

現代だからこその問題、そして不器用な者達のラブコメ

 

その全てを、どうか最後まで楽しんでもらいたい。

 

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