読書感想:ただ制服を着てるだけ2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:ただ制服を着てるだけ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想で私はこう書いたし、画面の前の読者の皆様の中でこの作品を読まれたことのある読者様はこう思われたかもしれない。この作品は怪作であると。そしてまた、こうも思われたかもしれない。この作品、果たして本当にラブコメと言えるのか、と。

 

 

その思いはきっと、間違ってはいないと思われる。実際に私も一巻を読んだ後そう思った次第である。だが、どうか安心してほしい。この作品は、ラブコメとしてはきっと、ここからが本番なのであると。

 

前巻の騒動後の顛末として明莉が得た、広己の家と言う居場所。家出もそのままに半ば転がり込むように彼の家の居住権を得て、手に入れた自分だけの居場所。

 

 しかし、その居場所と言うものは明莉に一つの弊害を与えていた。それは、単純な収入の減少と言うもの。それもまた仕方のない事かもしれない。広己はもう店に行く必要はなく、結果として太客を一人失った事になるのである。

 

「昼の仕事に変わればいいんじゃないか?」

 

そろそろ潮時か、と悩む明莉に提案された昼の世界への誘い。日の当たる場所へ、という誘い。

 

 しかし、そんな事を言っている場合でも無くなってしまう。ひょんな事から二人の関係が広己の店の従業員、舞香へと露呈し。更には明莉の店の店長、桜田さんにまで関係が露呈してしまうのである。

 

関係性を偽りのものであっても本物にすべくべく、恋人同士のように振る舞う二人。そんな二人の姿に思う所があったのか、何だかんだと認めてくれて手も貸してくれる舞香と桜田さん。

 

だが、それをよしと思わぬものがいた。明莉の店に現れた店長候補の青年、九条。かつての明莉の行いを知る者である。

 

過去の行いをネタに形勢を逆転され押し込まれ、しかし感情を抑えきれず言葉の牙を剥き叩きつけ。

 

その復讐とでも言わんばかりに、九条は広己を呼び出し明莉の過去を晒す。普通であれば目を覆いたくなるような煽情さに溢れた過去の姿。

 

「気にすんな。―――俺は、気にしてないから」

 

 過去の広己であれば目を逸らしていたかもしれない。だが、今の広己はもう違う。理由もなく明莉はそんな事をしないから、と無条件に彼女を信じ、不器用な言葉で受け止める。

 

そんな言葉に背を押され、友人の促しもあり文章に起こした自分の境遇。ラブコメヒロインとしてはあまりにも重い、苦難と挫折に満ちた茨の道の記録。

 

けれど、今はもう違う。だって今は、広己がいる。何ともいえる関係じゃないけど、心の底から安心できる、過ごす時間を噛みしめられる人がいる。依存していい、相手がいる。

 

だからこそ、「このままじゃいけない」、「ここからだ」。明莉は一歩踏み出し、昼の世界へと帰る事を決意したのである。

 

風俗店の裏事情と、中卒と言う烙印への扱いも描かれ更に重みが増す中、前巻とは違い確かなラブコメが香る今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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