読書感想:護衛のメソッド ―最大標的の少女と頂点の暗殺者―

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 さて、我々日本人は普段生きる上で何気なく享受している平和というもの。だが、今の世界に於いては平和と言うものが必ずしもどこにでも存在するものでない、というのは画面の前の読者の皆様もご存じではないだろうか。だからこそ、この世界に於いては平和と言うものは尊い物、と言ってもいいのだろう。

 

 

だからこそ、平和ではない世界に身を置く者達にとっては、平和と言うものは憧憬の対象となるのかもしれない。その手に掴みたいものとなるのかもしれない。

 

そんな平和な世界に身を置きたいと、超が付く程の名門校である克礼館学院の門を叩いた一人の少年の影があった。その名は道真(表紙左)。裏世界に於いて最強の暗殺者、「月影」として名を馳せた少年であり、今まで戦いの世界に身を置きすぎたが故に、平和と言うものへの接し方が全く分からぬ少年である。

 

「俺も自転車通学をしてみたい!!」

 

 思わずそんな細やかな夢を叫んでしまう程に、夢にまで見た平和な日々。しかしそんな願いは、彼の過去を知る学園の管理者により無情にも散らされる事になる。その原因とは、世界中の組織から狙われる少女、灯理(表紙右)の護衛を依頼されたからである。

 

何故彼女は狙われるのか。それはその身に秘めた異能のせい。度重なる襲撃により、既に護衛チームは残り四人の壊滅状態。

 

「私があなたを楽しませてあげます。だから私を護ってください」

 

報酬となるのは、灯理が示した口約束。最高のスクールライフを提供すると言う約束だけ。

 

その条件を呑み、裏世界の実力者たちとチームを組み。道真は新たな日々の中へと飛び込んでいく。

 

時に外へ出かけたり、そんなごく当たり前も新鮮で。けれどその新鮮さも見慣れた血生臭さに埋められる。

 

敵となるのは灯理を狙う謎の組織、「スクエア」。 だが、戦いはそう簡単にはいかなかった。本当の敵はすぐ側にいた。道真に恨みを抱くが故に、側で狙っていた敵が潜んでいたのだ。

 

真の黒幕により連れ去られる灯理。向かうは黒幕との因縁の場所。

 

戦いの中、明らかになる灯理の、死にたがりの裏に隠れた当たり前の思い。

 

絶体絶命の窮地の中、明かし合う二人の気持ち。道真が秘めていた罪の思い。そして灯理が誰にも言えずにいた、嘘をつき続けていたという真実。

 

「裏世界最高の暗殺者に不可能なことはない」

 

 けれど、それでも。道真は彼女を護るという事を選んだ。だからこそ戦う。不可能なんて事は無いから、そして自分は一人ではないから。チームで戦っているのだから。

 

ひきこまり並みに血生臭く、些細な描写の中に伏線を込め、更には手に汗握る駆け引き等、作者様の強みがこれでもかと出ているこの作品。

 

故に王道に真っ直ぐ、熱い面白さがあるのである。

 

王道の異能バトルが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

護衛のメソッド ―最大標的の少女と頂点の暗殺者― (電撃文庫) | 小林 湖底, 火ノ |本 | 通販 | Amazon