読書感想:現実でラブコメできないとだれが決めた?4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:現実でラブコメできないとだれが決めた?3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読まれた読者様がこの巻の感想を今、目にしていると言う前提の元にここからの記事を綴っていきたいわけであるが、画面の前の読者の皆様、前巻での衝撃の展開はオワスレデハナイダロウカ? 染め上げられなかった集団の総意、自身と違う人に向ける忌避感と嫌悪。人と違う事は、人よりも目立っているという事は、出る杭は打たれるの理屈で打たれる事となる。そんな事例は、何処にでもあり得ること。それはこの作品の中にも存在している。正確に言えば、前例として既に存在していたのだ。

 

 

その前例こそが、今巻の表紙である芽衣。耕平の創り出すラブコメにおいて「メインヒロイン」として見出されながらも、彼の理想を否定するかのように動く「ラスボス」である彼女である。

 

 「普通」である事に拘るからこそ、耕平に対立する立場を取り続け暗躍を続ける彼女。だが、彼女の根底にあるのは単純な嫌悪ではなく。いわば同族嫌悪、かつての「自分」を見ているような感覚を覚えたからこそ。彼女は邪魔するのである。

 

「私たち、みたいな。普通じゃない理想を実現しようなんて大馬鹿者は―――いるだけで、みんなを不幸にするんだ」

 

生徒会長の不信任という衝撃の結果に終わり、想定外の結果に心の土台を乱しながらも次の策を練る耕平の前、現れた芽衣は現実を受け入れ諦めろと諭し、自身の過去を放し始める。

 

 語られる彼女の中学時代。そこにあったのは、一つの純粋な理想に燃えていた彼女の姿。頼れる友人に囲まれながら、理想を実現しようとし。だが、出る杭は打たれると言わんばかりに打たれたという、まるで耕平の今にそっくりな過去。

 

理想を貫き、そんな世界を作り上げるために全てを動かそうとした。けれど、大切な事だけは見えていなかった。いつの間にか、目が曇り側にいた大切な人達の心の声さえも拾えていなかった。

 

いつの間にか押し付けになっていた。それが正しいと信じた理想を疑いもせず。信じ続けた結果、全てを壊し自身の周りを全て不幸にしてしまった。

 

「―――これでわかってくれたかな。普通じゃない君がどこに行き着くか、ってことを」

 

 彼女は叩きつける。かつて自分の通った道で、今も尚耕平が進もうとしている道の先にある「最悪の結末」の形を。これ以上ない程の形で否定する。彼自身の願いを、理想を。

 

それが、否定できない。跳ね除けれない。何故ならば、分かってしまったから。自分の道の先を見てしまったから。

 

嗚呼、これ以上折る事は必要だったのか。まるで我が子を千尋の谷に突き落とすかのように、どこまでも苦しく重い展開を突き付けられる今巻。

 

だが、確かな事が一つある。

 

突き落とされたのなら、這い上がればいい。耕平の真価は次巻、本当の意味で問われる事になるのだろうという事を。

 

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