読書感想:インフルエンス・インシデント Case:02 元子役配信者春日夜鶴の場合

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前巻感想はこちら↓

読書感想:インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、ネット上、もしくはSNS上に自分だけの「居場所」があるという読者様もおられるだろう。その居場所は大切なものであるので大切にしていただきたい。しかしそこが誰かを傷つける場所になってもいけない。例えネットにログが残らないとしても、話した内容はそれを見た者の心の中に残り得る。そして、もしその話した内容で気が付かぬうちに事実と違う事を流布してしまっていたら。それは行ってはならぬ禁忌である。

 

 

我々は忘れてはいけないのだろう。過去の所業はもう変えようがないと言う事を。そして一度生んだ過去は、時に自身に迫り脅かす影となり得ることを。

 

「ねえ。さっきの話、もっと詳しく聞かせてよぉ」

 

 そんな影、と言えるのかは今の段階では明言を控えるが謎の影に悩まされ、番組収録の場で自身が巻き込まれた事件とその顛末について話した真雪へと接触してきた女性が一人。彼女の名は夜鶴(表紙右)。元天才子役であり、一年ほど前に急にデビューし一気にのし上がった、「よづるん」のHNで活躍する人気配信者である。

 

彼女の悩み、それはRoot Speak上に実装された新たな機能、音声通話機能のみで情報を発信しているとあるアカウントの話を真に受けた人達のバッシングに悩まされているという事。無論、只のガセネタであったのならばっさり切り捨てられたのかもしれない。だがしかし。「炎上を運ぶ」という噂の通り、何故か彼女の周りで現実の不審火が相次いでいるのは確かなのであっただ。

 

出演取り消しされた大規模イベントに出演する為、噂の払しょくを願う彼女。

 

しかし、出張先にスマホを持っていくのを忘れようやく連絡の取れた玲華は何故か協力を拒否し。結果的にひまりと真雪、そして蓮水の三人で問題解決へと向かう事となる。

 

 問題点が見えず、さりとてログも残らぬが故に尻尾を掴む事も出来ず。なれば印象を真雪の力も用い操作してしまえば良い。ひまりと話し合い、蓮水と話し合い作戦を立て。しかし何処かヴェールに包まれた夜鶴の真意が把握しきれず。何処か全部は打ち明けてくれぬ彼女に不信感が募り。だが、蓮水の夜鶴を信じると言う言葉でまた前を向き。

 

夜鶴と蓮水、何処か似た歪みを抱えた二人。そんな二人は事件に向き合う中で仲を深め絆を深め。

 

そしてひまりと自分の関係に悩む中、今度は当事者として事件に向き合う真雪も成長の様子を見せ。

 

皆で行った行楽施設、そこで再び起きた事件。判明した一連の事件の犯人の正体。再びうなるひまりの鉄拳。

 

「なぜなら、僕たちの活動に答えなんてないからです」

 

 過去に向き合い、誰かの思いに向き合い。そして今度もまた答えのない活動へ、けれど今度は今だけの答えを以て。向き合い明かし、事件を解決へと導いていく。

 

だがしかし、彼等は未だ知らぬ。点と点が繋がる瞬間がすぐそこまで来ている事を。ひまりの心が踏みにじられる時がすぐ来るという事を。

 

前巻に続き再び人の悪意が牙を剥く中、それでももがき進んでいく。そんな独特の面白さがまた一つ深まる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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