クシャトリヤ、と聞いて画面の前の読者の皆様は一体何が思い浮かばれるだろうか。大型MAの後継機である緑色のMSが思い浮かばれた貴方はガンダム好きである。あの機体も中々に格好いい訳であるが、では実際の所、クシャトリヤとは何なのであるか?
それは、歴史を学ばれた読者様であれば何処かでお聞きした事もあられるのではないだろうか。ヒンドゥー教の教えに基づく身分制度、カースト。そのトップは司祭であるバラモン、その下が王族であるクシャトリヤ。 無論、バラゴンとかいうボケは要らないし、バラモンキングでもバラモンベスでもないし、バラモン(続柄名)でもない。
日本ではあまり馴染みのないこの制度。それもまた当然の事であるかもしれない。日本の最大宗派に身分制度はないから。だがしかし、意外と身近な所に身分制度が存在している事は皆様、ご存じであろうか?
その名はスクールカースト。画面の前の読者の皆様の中にも苦しめられたことがあられる人はおられるのではないだろうか。クラスという、小さな枠組みの中でしか成立しない、目に見えぬ壁。リア充グループが陰キャラグループを見下す、という時に苛めの原因ともなるそんな面倒な壁。
そんな壁は壊してしまえ。そんな事を思われたことのある読者の方もおられるのではないだろうか。そんな命題へと挑み、スクールカーストへと否定を突き付けていくのがこの作品の主人公である響である。
超人と称され、自他共に認めるリア充であり。モデルも務める「彼女」の奏(表紙)や、ダンス部部長の親友亮介、仲間である美少女、静玖やココといった頼れる仲間達と共に、日々を過ごす彼。
そんなある日、彼は親友である亮介がオタクグループの一員であるマスク系女子、羽鳥に懸想している事に気が付いてしまう。
だが、その恋はある意味で禁忌。何故ならリア充グループとオタクグループは、陰と陽に別れる存在であるから。まるで星と花のように、離れているから。女子ダンス部リーダーの我藤のように、反対に回る者達だっているから。
ならばどうするのか。その答えは簡単。羽鳥にリア充側、カースト上位に来てもらえれば良い。まずは彼女の趣味を理解する事から始め、響は徐々に彼女を自分達の側へと巻き込み、引っ張り上げていく。
まずはアニメの台詞を引用するところから直し、更に身だしなみや持ち物に至るまで色々と。
しかし、心までは中々に変えられぬ。些細な誤解から羽鳥の怒りが暴発し、再び距離は離れてしまい。そこに我藤の魔の手は迫り来る。
「もしこれが事実だとしたら、俺は、そんな奴を許せない」
だが、それを察知できぬ響に非ず。まるで物語のヒーローのように。羽鳥を助けに現れた彼は、毅然と静かな怒りと共に言い放つ。
彼の行いは、彼が語る様にエゴであるのかもしれない。けれど、それで救われた者も確かにいる。
彼の行いは正義か、それとも偽善か。その答えを是非、画面の前の読者の皆様の目で確かめてみてほしい。等身大で現実的な彼等の息吹に触れてみてほしい。
その果てに待つ面白さ、是非貴方の目で確かめてみてほしい次第である。
そして、最後の驚愕の真実に驚いてみてほしい。ヒントを一つ述べるのならば、「二人の名前」である。
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