読書感想:貴サークルは“救世主”に配置されました2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:貴サークルは"救世主"に配置されました - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、同人作家という一種の職業とはある意味、業の深い仕事であり中々に実力が問われる仕事なのかもしれない。私はそう考えている次第であるが、画面の前の読者の皆様はどう思われるだろうか。

 

 

商業連載ではなく、自らのお金で。全ては推しの作品への愛の為。そして市場が狭いからこそ売れるまでが大変であり、固定のファンこそが何よりも大切。そんな一面もあるこの世界。

 

 だが、何かの作品を手掛ける以上、職業と言ってもいいかもしれない病がある。その名は「スランプ」。いつ治るかも分からぬ、一度罹患したのなら命取りとなってしまうかもしれぬその病。そしてこの作品の主人公であるナイトとて、救世主とは呼ばれているけれど。本質は何処までいっても同人誌作家なのである。

 

前巻、魔王復活を阻止するために臨んだコミケ。見事に目標は達成された。だがその反動と言わんばかりに、ナイトはまるで燃え尽き症候群であるかのようにスランプに陥っていたのである。

 

 そんな彼に接近する影が一つ。同じ作品を愛し、小説と漫画という違いはあれど同じ戦いの場所で活動する「文芸先輩」(表紙左)。彼女の正体は何を隠そう、未来でヒメ達と敵対する「魔女」である。

 

「こんなナイトさんは、救世主なんかじゃないっ!」

 

腑抜けてしまい幾ら押しても暖簾に腕押し、関わるなと言っても魔女に関わり続けあろうことか、魔女の依頼まで受けて来て。そんな彼に失望し、ナイトの元から去っていくヒメ。

 

 彼女を失い、ナイトの心の中に空いた虚無の穴。その穴をふさがぬままに臨んだ新たなイベント。その結果は惨敗、ファンに押し付けてしまったのは失望ばかり。

 

なら、どうすれば良いのか。ヒメも、ファンも、失望させたままで・・・良いのか?

 

否、そんな訳はない。救世主と言われたって自信もない、自分は同人作家だから。

 

だけど、今。皆の救世主となる必要は何処にもない。

 

「救世主を、信じればいいだろ!」

 

 必要なのは、彼女だけの救世主となる事。既になくてはならぬものとなっていた自身の半身を救う事。だからこそ自身に喝を入れ。ナイトはヒメの元へと走り、予言をぶち壊すかのように自分を信じろと高らかに叫ぶ。

 

このままじゃ不完全燃焼、前に進む事なんてできやしない。だからこそ今度こそ、先輩もヒメも。三位一体で新たなイベントへ。

 

自身で挑んだ戦いだからこその、二面同時展開の修羅場。だがその地獄を乗り越えた先に待っているものは何か? もうお分かりであろう。今度こそ掴んだ、完全無欠の結末である。

 

ファンタジーの色を一旦お休み、同人活動の色を全面的に押し出していくからこそ、新しい面白さの側面が見えてくる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、創作ものがやはり好きと言う読者様は是非。

 

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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