さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様の中で未成年であるという方は、この作品を読まれる際には気を付けてほしい。あまりこの作品の読書は未成年にお勧めできない、と言っても過言ではないかもしれないので。この作品で描かれるのは何か。それは、何処か退廃的で陰鬱な香りのするような、現実感漂う日陰者達の世界である。
ではここからは未成年の読者の皆様にはちょっと刺激の強いお話になるかもしれないのでご注意願いたい。
リフレ、デリヘル。これは一体何を意味する単語か。言ってしまえば風俗のサービスの一つの種類である。だが実はこの二つは性的なサービスを伴うか、否かという違いがあるので気を付けておきたい。
一体なぜこんな前置きとなっているのかと言うと。この作品のヒロイン、明莉(表紙)が女子高生リフレで働く、制服を着ているだけのニセモノJKだからである。
そんな彼女と対を為す主人公、その名は広己。コンビニバイトから店長まで成り上がった努力家であり、家と職場の往復をこなすだけの社畜な青年である。
そんな二人は広己の後輩の紹介で出会い。自分の抱える悩みの解決の為、お店で明莉と触れ合い。
「わかんないってば・・・・・・」
その触れ合いの中、明莉は広己という人間の輪郭が掴めず悩んでいく事となる。据え膳食わぬは男の恥、と言わんばかりに自分を餌として目の前にぶら下げているのに手を出してこず、何故か自分の年相応、とでも言わんばかりにゲームに興じる事ばかりでよく分からなくて。
「こんだけ近くにいて他人事なんてことがあるか」
だけど、家出してきた自分を何だかんだと受け入れてくれて。最低な彼氏との喧嘩の時には躊躇いなく私財を投じて力になってくれて。
「与えてくれるなら、その分だけ奪っていって」
なのに、それしか知らない関わり方を迫っても拒まれて。何も奪う事無く、自分に只与えてくれて。
そんな彼の裏、隠れていたのは過去の拭えぬ傷。明莉の源氏名と同じ名の妹をすれ違いの果てに喪ったという、後悔しきれぬあの日の思い。だからこそ、どこか偽善でも。それでも彼は明莉を助けてしまったのだ。
「ひとまずオプション代として受け取っておけばいいさ」
さて、ここまでこの感想を読まれた読者様であれば、もうお分かりであろう。この作品は一般的に言えば怪作と言って差し支えない作品である。ラノベじゃなく硬派的な一般文芸と言っても通用しそうな作品である。
写実的に、繊細に、緻密すぎる程に描かれる風俗の実態。明莉の目を通して描かれる、社会からはみ出た女達の一つの行き着く場所、そこに広がる光景。
本当、GA文庫様はよくこの作品を刊行しようと思ったな、そう言いたくなられるかもしれない。だがこの作品は、互いに傷を抱えた二人が出会い、その傷が、歪なでっぱりがまるで噛み合うかのように埋め合い、お互いが「救い」となっていく作品なのである。
故にこそ、この作品は「ラブコメ」なのである。唯一無二に過ぎる、正にこの作者様にしか書けない作品なのである。
唯一無二のラブコメを読みたい読者様、社会派作品を読みたい読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。