読書感想:ドラキュラやきん!3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:ドラキュラやきん!2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で愛花との戦いは痛み分けのような形で一段落してしまい、追う術もない由良とアイリスには手を出すすべもなく。ではそれでとりあえず普通の日常に戻れるか、と言われればそうでもなく。分かっていたであろう、画面の前の読者の皆様も。ファントムの世界で生き続ける限り、彼に安息の機会は訪れず。愛花という外患は無くても、国内もまた気が付かぬ間に内憂だらけ。そして愛花の残した影響はまだまだ根深く。だからこそ、新しい騒動に巻き込まれる流れが始まるのが今巻なのである。

 

 

その呼び水となるのは、ぽんこつなれど一応はプロフェッショナルであるアイリスか。否。今まで由良の強力な味方であった未晴がその呼び水となるのである。

 

「実は京都の実家から、唐突に縁談が持ち込まれたんです」

 

一月も半ば、愛花との激突の余韻も少しずつ冷めてきた頃。未晴に突如、京都の実家から縁談が持ち込まれ。それを望まぬ未晴から偽りの婚約者としてあいさつする事をお願いされた由良。

 

断るわけにもいかず。けれどアイリスは協定を破る訳にもいかぬのでお留守番。そんな訳で一人お留守番のアイリスを残し、由良と未晴は本家へと向かう。

 

 ・・・さて、アイリスとはここで大人しくお留守番しているタイプの人間であろうか? 否、画面の前の読者の皆様は彼女の行動力についてはもうご存じであろう。

 

気になるあまり、放っておくわけにもいかぬが故に。自発的に協定をぶち破り、こっそりと彼等の後をつけていくアイリス。

 

そんな彼女の一時的な相棒となる男の名は、七雲。ひょんな事から彼女と知り合った未晴の幼馴染であり婚約者、そしてのっぺらぼうの一族の後継者。

 

ひょんな事から彼と共に追われる身となり、京都市街を駆け回る事になるアイリス。

 

順調に京都に到着し、未晴と共にホテルに入る由良。

 

 交わらぬ点と点、その間にはらむのは不穏な空気。何故七雲と未晴の婚約が前触れもなく急がれたのか。それは七雲の親父、のっぺらぼうの一族の長の暗殺事件が起きていたから。京都の闇に住まうファントム達、その間に吹き荒れる不穏な空気を是正するために。

 

だが、全ては遅きに失する。由良とアイリスたちの合流により繋がる点と点、だがそれを嘲笑うかのように事態の黒幕は牙を剥き、名家は炎に包まれる。

 

黒幕の目的は何か。その目的は悪か。否、行き過ぎているとしてもその行いの一面は「正義」。人になれず闇に彷徨い緩やかに消えていくファントム達を救いたい、ただそれだけが故に。

 

 そう、愛花の本格的な始動からではなく、事態はもう始まっていた。妖と人は既に混ざり出している。故にこそ黒幕とのすれ違い、そして蜂起はいつしか起きて必然であったのかもしれない。

 

鍵は開けられてしまった、もう戻る事は出来ない。新しい争乱は待ってはくれない。既に始まってしまった。

 

だからこそ、全ての始まりはきっとここから。画面の前の読者の皆様も是非見てみてほしい。

 

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