百万回生きた猫、という作品において猫は百万回も生きてそれぞれの人生を送っていた。同じレーベルである某一億年ボタンの世界では、主人公は一億年を何度も繰り返していた。しかし、この作品の主人公は一味どころか何味も違う、と言っても過言ではない。何故ならこの作品の主人公は、タイトルの通り100億回も転生し、その100億回の人生の全てで様々な敵と激しい戦いを繰り広げているからである。
彼の名はディータ(表紙左上)。生来の虚弱さを抱え、親からも村からも捨てられ。それでも幼馴染であるシストラ(表紙右下)とささやかながらも平和な生活を営んできた少年である。
だが、シストラの持つ「神の心」と呼ばれる力は、文字通りに彼女を巡って争いが巻き起こるきっかけとなる。彼女の命を犠牲とする事で、万物の願いを叶えるというとんでもない力。だが、この力はディータに力を授ける鍵ともなる。
一度目の人生、死にゆく彼女に願った。どうか貴方と幸せな日々を、と。幾度も幾度も繰り返した、その果てに数え切れぬ程に見てきた、彼女の死を。
そして百億回を超える転生の果て、彼は全てを知っているという知識面のアドバンテージと、魔術においても剣術においても、誰も及ばぬ世界最強の力を手に入れていたのだ。
そして百億回の転生の果て、ここから始まる新たな生活。そこに待っているのはどんな展開か。それこそは無敵、正に無双の力で繰り広げる日々。
無詠唱魔法に始まり、オリジナル魔法、更には強大な魔物すらも一瞬で細切れに解体する程の、百億回の果てに手に入れた無双の剣術。
村に襲い来る魔物を瞬殺し、都にある学園に入学を許されシストラと共に入学し。
生意気な貴族を圧倒的な実力で瞬殺し、「剣の舞姫」と呼ばれる王族の姫でもある、エルデすらも圧倒し。エルデを捉えようとする実家である王族の思惑すらも片付け。
彼とシストラの元に、脅威として現れるのは厄介な貴族だけではない。魔族すらも彼女を狙い来襲し、果てには魔王すらもやってくる。
「理由か・・・・・・そもそも、お前がオレに勝てる要素は最初から何もなかった」
「そして何より、シストラを穢そうとしたことだ」
だが、魔王すらもディータの敵にはならず。彼はただ、愚直なまでに彼女を守り続ける。彼女に隠された光よりも輝き、諸人を魅せる事で守る為に。
その心の中にあるもの、それはただ、シストラへの愛。だからこそ彼は戦い続ける。幾億の転生の果てに身に着けた、数え切れぬ程の切り札を用いて。
圧倒的なまでに最強、そして無双。そんな爽快感のある作品であり、いっそインフレに振り切っているからこそ、口当たりの軽い熱さある面白さのあるこの作品。
無双系の作品が好きな読者様、軽く読める作品が好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。