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読書感想:エルフ奴隷と築くダンジョンハーレム ―異世界で寝取って仲間を増やします― - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、この作品は既にご存じの方もおられるであろうが元々はノクターンの方の出身である。つまりは言ってしまえば性的な描写前提の、男子の根源に突き刺してくるための作品である。しかし、勿論ダッシュエックス文庫は一般向けのレーベルである。そして、この作品は確かにエロも大切な芯であり魅力である。しかし、それだけではいられないのも確かである。
なれば、どんな武器を持っていくべきか? その答えが今巻である。この作品はエロであると同時に、ダンジョン探索もののファンタジーである。そちらに焦点を当てていくのが今巻なのだ。
ハズキの故郷にあると言う七大ダンジョンの一つ、ノルン大墳墓。魔本を探すと言う目的のために砂漠を越えんとするマルス達。
そんな中、道中にあるオアシスの街で彼等は異国の王子のダンジョンからの凱旋パレードに出くわす。王子の名はクルーゼ。実力主義のラオファイト王国という国の第四王子であり、幾多の奴隷を使い潰すという最悪な攻略法で突き進む冷血漢である。
その奴隷の隊列の中、異種族である少女が一人。亜人であり、自らの身体を拡張する魔法を使い戦う少女、ネム(表紙左)である。
「わかってる。―――助けよう」
虐げられる彼女を見逃せず。リリアの願いを受けパレードの中へと乱入し、若干強引に王子からその身柄を大金で買い受け。新たな奴隷という仲間を手に入れ、マルス達はノルン大墳墓へと向かう。
そこで待ち受けているものは何か。それは、今までのダンジョンとは全く違う全ての構成要素。そして、マルスの陣営とクルーゼの陣営、それぞれで交わされる想いである。
マルスが初めて踏破したダンジョンのボスであったバジリスク、かつてとんでもない苦労の果てに倒したヒュドラ。危険な奴等である筈の彼等は、このダンジョンでは弱者に過ぎず、それこそわんさか存在する。更には封印されし魔術師、ノルンの怨念が影響を及ぼし生ける屍共が闊歩する危険地帯。今までとは正に段違い、そんなヤバい場所である。
「―――どうしてこうなってしまったのだろう」
そんな中、あの頃とはまるで違う、正しく別人となり権力争いに憑りつかれたかのように、冷血であり続けるクルーゼに付き従う腹心、ユリスの中に燻る思い。とうの昔に呪いとなった約束を、それでもと後生大事に抱え自信を押し殺し付き従う彼女。
「マルスに惚れてもいいですよ。何と言えばいいのでしょうかね。マルスといると、自分が自分でいていいのだと思わされます」
だが、彼女の心は揺れ動く。三体ものヒュドラとの戦闘から救い出され、彼等により手当てを受ける中、奴隷と主人の垣根なく、まるで家族のように和気あいあいと幸せそうな彼等の姿を見て。初めてクルーゼの元を離れ、リリアに諭され。操り人形の糸は切れ、人間となる権利が与えられる。
「約束・・・・・・しましたから。私だけはずっとそばにいると。味方だと」
「―――ごめん。たくさん傷つけた。お前だけが味方だったのに」
だが、それでも彼女は最後まで彼の側にいる事を選んだ。冷たき覇道のその果て、辿り着いた二人きりの世界で。
そう、誰しも止まれなかった。例え自分の抱えたものが既に呪いと分かっていても。ノルンもユリスも、その「愛」に殉じていただけ。
哀しき事、そう思う事無かれ。この世界は非情。立場も身分も関係ない、死は誰しも平等なのだから。
リリアに自身の夢を話し更に絆を固め、ネムとも男女の仲となるマルス。
アンデッドとなっていた両親との哀しき再会と決別を越え、また歩き出すハズキ。
まだ旅は止まれない。目的は未だ叶っていないのだから。
今巻の展開を、新たな面白さの開拓とみるか、強みを放棄する愚行とみるか。それは是非、画面の前の読者の皆様が読まれて確かめてみてほしい。だが、私見を述べるなら今巻は違った意味で面白い、そう言いたい次第である。
迷宮攻略ものが好きな読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
エルフ奴隷と築くダンジョンハーレム 2 ―異世界で寝取って仲間を増やします― (ダッシュエックス文庫) | 火野 あかり, ねいび |本 | 通販 | Amazon