読書感想:街コン行ったら先生しかいなかった

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 街コン。果たしてそんな、男女の出会いを目的とするイベントにいかれたことのある画面の前の読者の皆様はどれほどおられるだろうか。私個人としては縁遠い、言うなれば異世界的なイベントであるが、どんな面白さがあるのだろうか。

 

知人に、今なら男子が誰もいないと唆され、勇気を出して参加した初めての街コンは、あいにくの大雨。

 

 だが、勇気を出して参加した街コンでこの作品の主人公である遊輝を更なる驚愕のイベントが待ち構えていた。それは何か。その答えは只一つ、街コンで何故か同じテーブルになった三人の女性。魅力的な大人であるその三人が、何の因果か自分の通う高校の先生であったのである。

 

それぞれの願いを込め、この街コンに参加した三人の先生。

 

担任であり数学教師、過保護な父親に悩む梨々花(表紙)は恋人がほしくて。美術教師の小春は弟に憧れ。音楽教師の奏は自身の同級生達が結婚と出産が続く現状に焦りを覚えていて。

 

 そんな三人にとって、遊輝という存在は正に渡りに船、鴨が葱を背負って来るようなもの。

 

「恋人役、引き受けてくれる?」

 

「私の息子役になってちょうだい」

 

「わたしの弟になってほしいな」

 

本気になれる関係でもない、だからこそ安心してお願いできる。三人それぞれからお願いされ始まる、一種の契約関係に基づく三人それぞれとの関係。

 

それは正に新しい扉、その先に待っていたのは今までも思っていなかった非日常。

 

梨々花の父親に挨拶する前にまずは恋人同士として見えるようにデートに出かけてサポートする事になったり。

 

かと思えば、奏の息子(設定年齢、十歳)になり切る為に一週間同居し、甘える練習をする事になったり。

 

はたまた、小春の欲望を満たす為に、同居して姉弟になる練習をしてみたり。

 

 

いったいどういう事なの、と思わず問いかけたくなった画面の前の読者の皆様、貴方の感性は恐らく決して間違ってはいない。だが、落ち着いてほしい。どうかツッコミは控えてほしい。何故ならこの作品は気にしたら負けである、ツッコんだら負けである。だってこの作品はコメディなのだから。

 

「きみが思っている以上に、あたしはきみを気に入ってるの。だから二度と別れるなんて言わないで。本当に別れ話を持ち出されてるみたいで悲しくなっちゃうわ」

 

「心配いらないよ。ユーくんにはお姉ちゃんがついてるもんっ」

 

「あなたにはママもついているわ」

 

 普通に見れば、どこか歪でおかしな関係であるのかもしれない。けれど、彼等はこれでいいと受け入れ、自分達で望んだその役割を演じている。なれば、我々が文句をつけるのはきっと間違いなのだろう。幸せであれば、それで良いのだろう。

 

何もツッコむ余裕のない怒涛のコメディを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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