読書感想:鋼鉄城アイアン・キャッスル

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 心に剣、輝く勇気。これは某仮面ライダーの主題歌の一節である。だが、この作品に登場する人物達、戦国時代の武将達は心に城を持っている。それは一体どういう事か。その答えは表紙後方、見た事もないロボットが表しているのがこの作品なのだ。

 

とある日本、戦国時代。我々が習ってきた時代背景においては足軽たちがぶつかり合い、武将達が一騎打ちをしていた時代。

 

が、しかし。この世界の戦国時代においては主役は武将でも足軽でもない。戦乱の主役、その名は「鐵城」。生命そのものに宿る「龍氣」と呼ばれるエネルギーを糧に、城主の互換を拡張させ、城主の意のままにその力を振るう、選ばれし武将にしか扱えぬ超兵器である。

 

もうお分かりであろう。この作品における戦国時代は、日本の様々な名城が変形した巨大ロボットたちが鎬を削る、とんでもない時代である。

 

『京に上り、旗を立て、ここに―――この戦国の世に織田信長という漢がおるぞと大音声で叫んでやるのだ。畏れ入ったならば、ひれ伏せ。気にくわねば、かかってこい。そう神州全土の諸大名どもに告げてやるのだ』

 

その時代の中、自らの大望、将軍の地位などどうでもいいと自分だけの夢を叫んだ織田信長。その叫びに心動かされた若き戦国武将、その名は松平竹千代(表紙左)。皆様もご存じであろう、後の「徳川家康」である。

 

「昼寝殿」と呼ばれ侮られていた彼の心に火は灯り、今、確かな覚悟を持った彼の手により彼の城、岡崎城は目を覚ます。

 

だが、彼はまだ未熟であった。大望を抱き駆け出しながらも彼は分かってはいなかった。力を持つ事の本当の意味、自らの願いを叶える為に必要な力、それを求めると言う事の意味を。

 

自らが力を望んだせいで、兄貴分を犠牲としてしまい。それと引き換えに手に入れた力は朽ちた剣で。

 

それでも、紅一点であるくノ一、さやか(表紙右)を始めとする部下達がいる。その力に惹かれ集まってきた者達がいる、その者達の力もありなし得た三河統一という成果があれば、今川義元という引き寄せてしまった強大な敵もいる。

 

だが、それは確かに竹千代が為した戦果である。彼と朽ちた剣の正体、天叢雲剣、そして彼等に惹かれた志ある者達成し遂げた大きな一歩である。

 

もう己の中に「城」は確かに築かれていた。なれば最早迷う事は無い。後はただ、踏み出すだけ。目の前に立ち塞がる今川義元という敵を討ち果たすだけ。

 

「重くない。俺の胸にはもっと重いものがあるのだから」

 

「熱くない。俺の胸にはもっと熱いものがあるのだから」

 

「硬くもないっ!」

 

「俺の胸には、もっと硬いものがあるのだから・・・・・・」

 

目覚めた彼の器。粗削りながらも勝利を渇望し、まるで新星のように燦然と輝くその魂。其が魅了したのは天叢雲剣。神代の剣が真の意味で竹千代を認め相棒と為すとき、誰にも負けない無敵の「城」が我此処に在りと咆哮を轟かせる。

 

全体的には講談調という滅多に見ない文体を取るこの作品。

 

だが、この作品の中に息づいているのは確かな命の息吹をこれでもかと轟かせる熱き武将達。だからこそ、この作品は何処までも熱い。まるで引き込まれるかのように、心躍る戦場に連れていってくれるかのように。その熱さがあるからこそ、この作品は面白いのである。

 

変形ロボットが好きな読者様、熱き作品が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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