読書感想:神角技巧と11人の破壊者 下 想いの章

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前巻感想はこちら↓

読書感想:神角技巧と11人の破壊者 中 創造の章 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、三か月連続刊行のこのシリーズもいよいよ今月で完結である。その事を示すかのように、「11人目」の正体もまた、どんどんと絞り込まれる所まで来ているのは前巻まで読まれた読者の皆様であればご存じであろう。では、破壊と創造、そして何を描くのか。それはこの巻のサブタイトルにもある通り「想い」である。ただ破壊するだけでは、創造するだけではなく、大切なのは想いである。

 

それを表すかのように、今巻でもまた強敵達と死闘を強いられるミヤビは、とある究極の選択を強いられる。何のために破壊するのか。何の為、誰の為。力を持つ者、選択できる権利を有した者としての責任。

 

砂の国の双子が操る、砂漠を味方につける大蛇。原初の神角技巧保持者であり、永き時を生き抜いてきた「滅びの王」の悲嘆と後悔。

 

そして、ミヤビは遂に「11人目」と邂逅を遂げる。その名はフィリアシャウト。アルマ達全ての邪神の始祖であり、自らの愛のままに愛し、破壊を振りまく災厄。決して止める事が出来ぬ、最強の敵。

 

全ての力が通じぬ、正に天災が如き暴虐。全ての力が通じず、圧倒的な力をただ行使するだけで、常識を自らに有利に書き換えてくる無敵ともいえる敵。

 

 だけど、負けられない。何故ならミヤビは一人ではないから。今まで出会い、力を合わせてきた仲間達がいる。そして、生みの母に反旗を翻し、自らと共に歩んでくれる邪神の子供、アルマだっている。

 

それは、新しい道を生み出すが為の戦い、力。破壊しか出来ないフィリアシャウトは決して知らぬ、破壊だけではない、創造もあるからこそ生まれる力。

 

「アルマの想いが、敵味方なんてつまらない線引きに疑問を投げて新しい道を創ろうとしたこいつの決意がっ、ただのはかいしかできない最強如きのアンタに負けるもんかあ!!!!!!」

 

一度でも食らいつかんと繰り出したその一撃が届かぬ道理なんて何処にもない。何故ならば彼等は人間だから。人間だからこそ、神には見えぬ境地を見つけられる人間だからこその力こそが、神を討つ刃となるのだから。

 

例え全てを破壊してしまったとしても、ゼロから創造することはできる。人と人とが手を取り合って難問に挑み続ける限り、新しい可能性が生み出せるのである。

 

圧倒的に自由で、だからこそ縦横無尽に熱くて面白い。その面白さのままに駆け抜ける。

 

鎌池和馬先生のファンの読者の皆様、熱い作品であれば分厚い作品でも大丈夫な読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。