読書感想:インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合

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twitterFacebookInstagram、今あげたSNSをどれか一つでも利用されている読者の皆様はどれほどおられるだろうか。恐らく、ほぼ全ての読者の皆様が利用されているはずである。では、利用されている読者の皆様は「デジタルタトゥー」という言葉と「六次の壁」という言葉はご存じであろうか。これを物凄く簡単に言うなれば、知り合いの知り合い、というように辿っていけば六番目のステップで世界中の人と繋がってしまう。そしてSNS上での情報は半永久的に残ってしまうからこそ、発言には気を付けましょうという事である。

 

実際、炎上という現象は一度起きたら鎮火するのは難しい。最近であれば、某六人組youtuberのリーダーの方が仲間を庇う不用意な発言をしたことで炎上したのが印象に新しいかもしれない。炎上には気を付けたいのでどうか皆様、発言内容は誰に見られているか分からないと言う事を気を付けてほしい。私も実際、発言には注意している。

 

そして、SNSは肯定するだけのものではなく、時に人を否定し傷つける悪意となる。その危険性はいつだってすぐそばにある。

 

そんな、顔も知らぬ誰かの悪意に晒されている少年が一人。彼の名は真雪(表紙左)。SNS上でのストーカー被害に悩む少年である。

 

では、彼は普通の少年なのか。否。彼の裏の顔は「神村まゆ」。メイクアップ系の動画サイトを運営する超人気「男の娘」インフルエンサーである。

 

そんな彼は、自身が進学予定の大学のオープンキャンバスで一人の女性と出会う。彼女の名はひまり(表紙右)。かつて親友がSNSの悪意に晒された時に守り切れなかったという後悔を持つ、腕っぷしの強さが自慢の女生徒である。

 

「任せて。お姉ちゃんたちが助けてあげるから!」

 

某女性声優が演じたキャラが言いそうなセリフとと共に、ひまりの担当教授、玲華と共にあっという間に事件を解決してくれて。

 

「僕は、ひまりさんにとって魅力的な人ですか?」

 

まるで惚れ込んだかのように、依存するかのように。自分を受け入れ、優しくしてくれる彼女に、自分に出来る必死で距離を詰めようとする真雪。

 

だが、そんな二人を脅かすかのように迫る影が無数。彼等の名は『死んだ』、ネット上で炎上した人間達の集合体であり、過激な方法で世界を変えようとする危険な者達。

 

彼等の現実の悪意に晒され、誘拐の鬱き目にあう真雪。ネット上で配信される彼の姿と犯行声明、過激な要求。

 

 その姿を見て止まるひまりであるか。否、そんな訳はない。何故ならひまりは「お姉ちゃん」であるから。

 

「わたしには守りたいものがある。守れなかった過去がある。守るべきものに危害を加えようとするあなたたちを許せない。だからここに立っているの」

 

「たった一度の失敗で人生が終わるなんて、そんなの当たり前でしょう!」

 

「―――過去を赦してほしいというのなら、せめて真っ当な手段で、全力で足掻きなさいよ」

 

自らが例え露出の危険を背負おうとも関係ない。今、守りたい人がいる。守れなかった後悔と、守りたいと言う願いがある。だからこそ雄々しく、彼女は吼えて見せる。

 

この作品は「現実」と「人間」の悪意がこれでもかと示される作品である。今の世の中だからこそ成立する、現代だからこそのミステリーである。

 

そして、ネットの悪意に晒された者達が出会い、「居場所」を見つけ出していく作品なのである。

 

現代だからこそのミステリーが読みたい読者様、雄々しいヒロイン兼主人公が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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