読書感想:限界超えの天賦は、転生者にしか扱えない 2 -オーバーリミット・スキルホルダー

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前巻感想はこちら↓

読書感想:限界超えの天賦は、転生者にしか扱えない オーバーリミット・スキルホルダー1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。「男子、三日会わざれば刮目して見よ」という言葉があるのをご存じの読者の皆様はどれほどおられるだろうか。簡単に言うと、男の子の成長は全く以て早く、三日も会わなければもはや別人と言っても過言ではないという意味である。では三日の何百倍もの日々、四年。そんな少し長めの月日が経てばどうなるのか。

 

そう、四年である。前巻の最後、「銀の天秤」の仲間達と別れゼリィと旅立ち早四年。我等が主人公、レイジの姿はクルヴァ―ン聖王国の聖王都にあった。

 

 では彼は今、どんな仕事をして生きているのか。それは表紙を見ればきっと分かっていただけるであろう。彼は今、貴族の家で厄介になっていた。彼の仕事、それは聖王都に居を構えるスィリーズ伯爵の御令嬢、エヴァ(表紙左)の護衛である。

 

聖王国の内政の深くまで関わりながら、「冷血卿」と呼ばれるほどに敵の多いスィリーズ伯爵。彼を暗殺の窮地から救った事をきっかけに舞い込んだ、護衛の仕事。

 

「・・・・・・レイジ」

 

「はい」

 

「わたくしを、守るのだわ」

 

だが護衛の仕事は一筋縄ではいかず。非合法な奴隷商への義憤に燃えるエヴァに引き連れられ、護衛として鉄火場へと飛び込んでいくレイジ。

 

四年前だったら一筋縄ではいかなかったかもしれない。しかし、四年の月日は彼を一端の強者へと変えていた。天賦を外しての訓練、そして聖王都での生活。訓練環境には事欠かぬ日々が、彼の成長を促していたのだ。

 

 だが、そんな彼にも何ともならぬものがある。それは何処かすれ違う、スィリーズ伯爵とエヴァとの関係。そして、貴族の子供達へと天賦を授与する儀式の場に突如現れた、謎の巨大なる敵である。

 

ウロボロスと名付けた謎の敵。巨大なる蛇の姿を取る怪物は「盟約」の事を口にする。かつて竜から聞いたその単語を。そしてスィリーズ伯爵は言う。奴は「裏世界」からやってきたと。

 

裏世界とは何なのか、盟約とは何なのか。それも分からぬまま、再び追われる身となるレイジ。

 

この国で縁を結んだ者達に惜しまれ、惜別とばかりに知らぬ関係ではなかった追手を蹴散らし。

 

「ほんとうに・・・・・・これが最後のお別れではないのね?」

 

「はい、もちろんです」

 

そして、ずっと側にいたエヴァを自分の選択を押し付ける形で置いて行く事を選び。けれどまた、いつかの再会を約束してレイジは旅立つ。垣間見えたヒンガ老人の縁者の影を追い、新たな国へ。

 

 さよならだけが人生なのか。彼は何も悪い事をしていないのに何故こうも、世界は彼に残酷なのか。けれど、確かに足跡は確実に増えている。そして、レイジという一人の少年を理解してくれる者達もまた、確かに少しずつ増えているのも確かである。

 

新たな世界が仄めかされ、世界は大きく広がって。確実に面白さが一歩進む今巻。どうか、レイジの道行きのゼリィ以外の同行者が増えてほしいものである。例えば「彼女達」のような。

 

シリーズのファンの皆様、やはり王道ファンタジーが好きな読者の皆様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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