読書感想:【朗報】俺の許嫁になった地味子、家では可愛いしかない。

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は趣味の合う友達はおられるであろうか。趣味の合う、誰よりも打ち解けて話せる友人は何よりも貴重な存在である、それは確かである。では、趣味の合う異性の友人がいると言う読者の皆様はどれほどの数おられるであろうか。

 

両親の離婚、そしてこっぴどくフラれた過去のトラウマ。そんな拭えぬ過去から、三次元の女性に幻滅し二次元の女性のみを愛すると決めた少年、遊一。

 

 だがしかし、はじまりはいつも突然に。運命の女神というのがいるのならまるでこの出会いはいたずらと言わんばかりに、彼に運命的な出会いが訪れる。

 

海外にいる父親により急に決められた婚約。あれよあれよという間に引き合わせられる婚約者。

 

 その彼女の名は結花(表紙)。クラスでは無口で物静かな、何処か謎めいた少女である。

 

是非もなく断る筈だった、いきなりの婚約話。

 

「――――さ、最近の推しヒロインは誰ですか?」

 

だがしかし、自分の推し声優の中の人であると名乗った結花の唐突な一言により事態は図らずも急転していく。

 

その場で判明したもう一つの事実、それは結花をずっと支え続けてくれた、ずっとファンレターをくれたファンが遊一であるという事。

 

―――この出会いは、運命かもって。

 

彼女が零した言葉の通り、この出会いはまるで運命の赤い糸がお互いを求め呼び合ったかのように運命的で。

 

「なんか、荷物が運ばれてくるとさ。今日からここで遊くんと一緒に暮らすんだなぁって実感が湧いてくるよね」

 

 ひとまずは許嫁から始めよう。その約束の元始まった二人の同居生活。その中、遊一は結花の自分しか知らぬ一面をどんどんと知っていく。

 

学校ではつんつん、我関せずと言わんばかりに他人事。

 

「絶対もっと、大きくなってやるんだからね!」

 

「私の方は・・・・・・覚悟、してたんだけどな」

 

だけど家では二人きり。その小さな世界では饒舌で明るくて。表情豊かにぐいぐいと距離を詰めてくる女の子で。

 

 どんどんと増えていく、自分しか知らぬ顔。そして自分にだけ向けられる、結花の献身的な愛。その愛がいつしか、遊一の心の穴を埋め、彼を知らぬ間に変えていく。

 

「そうかな・・・・・・案外こういうの、得意だよ」

 

結花の芸能生活を阻まんとする危機が訪れた時。今までの遊一であれば我関せず、その筈だった。

 

けれど今、自分は彼女の「夫」である。嫁を影ながら支える、それこそが夫の、彼女だけのヒーローの務めであると。

 

大好きな何かを犠牲にしてでも彼女の為に。もう彼女はそれほどまでに大切だから。

 

「―――私も。世界で一番、愛してるよ・・・・・・遊くん!」

 

向き合い話して分かり合い。心重ねて響き合う。二人だけの時間と秘密を重ねて、「許嫁」を超えて「夫婦」に、「家族」になっていく。

 

そう、「家族」は一人だけでは出来ないから。何もかも話せて、お互い何も言わなくても信じあえる。だからこそ家族になれるから。

 

正直に言おう、正に至極で至高。この作品は間違いなく尊い。私はそう断言したい。心が尊いと叫びたがっているように、まるで五臓六腑に染み渡るかのように。可愛く甘く、そして確かに温かい。そんな二人だけの絆が丁寧に描かれているからこそ、この作品は立ち上がって拍手を送りたくなるほどに、ラブコメとして一つの究極形なのである。

 

全てのラブコメ好きな読者の皆様、ギャップのあるヒロインが好きな読者様は是非。

 

また一つ、この世に尊い作品が生まれる瞬間に立ち会える筈である。

 

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