読書感想:双神のエルヴィナ

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は女神と聞くと、どんな作品のキャラを思い浮かべるだろうか。どんな印象を抱かれるであろうか。女神、それは清廉潔白な存在であると思われる読者の皆様も多いかもしれない。けれど女神が神話に語られるような存在ではなく、各個に意思を持った一つの存在であるとしたら、貴方は幻滅されるだろうか。

 

唐突だが、この世界は遥か昔、一度滅びかけてしまったらしい。その理由は人間、にあるわけではなく。天上の世界である天界で生まれ育った女神たちが、世界の支配者の座を相争い戦ったからである。

 

だがしかし、長き時の争いの果て、女神たちは穏やかさを得て、慈愛を以て人間界を見守る存在となっていた。けれど女神たちは今、飽和状態と言わんばかりに天界に溢れかえり、今再び世界の覇権をめぐる戦いが巻き起ころうとしていた。

 

そんな天界の動向は露知らず、だけど人間界もまた、世界中の人々のやる気がなくなるというおかしな切っ掛けから始まった滅亡の危機を経て、ELEMと呼ばれる次世代の万能物質の発見を切っ掛けとし、再生を始めていた。

 

 かの再生の旗振り役となった巨大コンツェルン、創条家。その御曹司であり、幼き頃に出会った「女神」へ抱いた初恋を燃やし続ける少年、照魔。彼はある日、突然転移してしまった天界で一人の女神と出会い、彼女を思わず助けようとしてしまった事で、女神と命を共有し人間としての死を迎えてしまう。

 

かの女神の名はエルヴィナ(表紙)。二丁拳銃を扱う中二病気味の女神であり、「邪悪女神」と呼ばれる陣営における最強に過ぎる女神である。

 

照魔の乱入により、女神大戦は勝者なしのバグに見舞われるも、エルヴィナは追放される道を選び、照魔と共に人間界へと降る。

 

 唐突に始まる、常識知らずな女神との共同生活は驚きとツッコミと刺激に満ちていて。けれど、状況は平穏なままではいてくれなかった。仮初の勝者を引きずり下ろし再び女神大戦を始める為、「邪悪女神」の陣営がエルヴィナと照魔を狙い動き出していたのだ。

 

そして、エルヴィナは重々しく告げる。この世界の復興は復興なんかじゃない。さらなる地獄を呼び込む為の下準備だと。

 

その言葉を示すかのように、降臨した女神により天界に喧嘩を売ったと判断され。照魔の街を舞台に、女神同士の戦いは幕を開けてしまう。

 

「今までありがとう、ばあちゃん。俺・・・・・・守っていくよ。叶えた夢も、この街も」

 

その余波が、身勝手な傲慢が照魔の大切な人の命を奪った時。彼が覚悟を決めて立ち上がりエルヴィナと全てを重ねた時、目覚めるは英雄の力。かつて禁忌と恐れられれど、今確かに希望となり得る光の力。

 

正に熱く、正に王道。どこか壊れたヤバい者達が集いド派手にぶつかり合う。だからこそこの作品は面白い。

 

熱い戦いが好きな読者様、作者様のファンである読者の皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

双神のエルヴィナ (ガガガ文庫 み 7-26) | 水沢 夢, 春日 歩 |本 | 通販 | Amazon