読書感想:今日から彼女ですけど、なにか? 1.一緒にいるのは義務なんです。

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。一つ貴方方に問うてみんとしたい。貴方に取って青春とは一体何であろうか。一体何をすれば、青春と呼べるだろうか。部活だろうか、友達と遊ぶ事だろうか、それとも、恋をする事であろうか。

 

ではもし、「恋をする事」こそが「青春」であり、「恋人を作る事」を求められてしまったらあなたはどうされるであろうか。

 

いつかの未来、少子高齢化対策の一環として恋愛を推進し、卒業後の結婚を条件に様々な扶助や支援を約束する「恋愛推進法」なる法律が成立された日本。その片隅に、「国立恋実高校」なる恋人を作る為のカリキュラムを取り入れた高校があった。

 

 そんな高校に一人の少年がいた。彼の名は春太。恋人がほしい、青春したいと言う単純な欲を突き詰めたタイプの人間である猪突猛進系な愛すべき馬鹿である。

 

「安心せよ、俺の青春は絶対に逃げない! なにせこの手で掴んで離さないのだからな!」

 

一目惚れの情動そのままにひた走り、思い立ったが吉日と言わんばかりに即行動。これでもかと青春に邁進していく春太。

 

 だがしかし、とある事件により悪評を貰っていた彼は中々恋人が出来る事がなかった。それどころか、彼は知らなかった。この恋実高校がどんな場所であるかという事を。

 

この高校は恋人を作る事を推奨している高校である。そんな場所で恋人が出来なければどうなるか。画面の前の読者の皆様ももうお分かりであろう。その先は退学と停学のペナルティが待つ闇の沼である。

 

 その危機を回避するために、春太は一人の少女と疑似的な恋人関係のコンビを組む事となる。彼女の名は薫(表紙)。転校早々落第寸前の大ピンチな少女である。

 

一緒に仲良く見えるように下校してみたり、休日は疑似デートに励んで学校からの指示でツーショット写真を撮る事になってしまったり。

 

その最中、彼が触れる事になる薫の心の闇。偽りの夫婦だった親を見てきたからこその青春の、恋愛への忌避感。

 

「恋愛の仕方なんて、誰も分からん。だからみんな一生懸命に足掻くのだ。それが、青春である」

 

その闇を前にして、春太はあっさりと言い、それでも彼女に手を伸ばす。不器用だとしても真っ直ぐ一生懸命に。かつて青春を過ごせなかった「二人」の分まで溢れる青春の力を胸に、誰よりも熱く一直線に。

 

そう、「青春」である。青春の形は人それぞれにあって、恋愛の形も人それぞれ。

 

そんな人それぞれの形が一つの舞台で真っ直ぐにぶつかり合い、四十路の独身教師や留年しすぎて二十歳を越えた先輩と言った愛すべき、憎めぬ者達と交差し炸裂する。この作品には、これでもかとそんな、青春の圧倒的熱量が込められている。

 

だからこそ面白い。青春とは、迷走で暴走で疾走なのだから。

 

青春をこれでもかと摂取したい読者様、ドタバタなラブコメが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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