読書感想:日和ちゃんのお願いは絶対2

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前巻感想はこちら↓

https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/05/09/235139

 

さて、前巻で主人公である深春と日和は無事、最初の生涯を乗り越えお付き合いを始めている。だがしかし、我々は何か忘れてはいやしないだろうか。この世界は我々の世界の言わば延長線上にある世界であり、この世界は徐々に終わり始めているのだと。

 

ネット回線の異常な混雑による遅延。そして、かの有名な国の解体。

 

前巻にも増して静かに、今はまだ深春と日和の周囲を揺るがすほどではないどこか遠くで。だが前巻よりも確かに激しく、世界は壊れだしている。

 

壊れ往くこの世界で、もし「お願い」なんて力が無ければ。願うだけで叶えられる力が無かったのなら。二人はごく普通の何処にでもいるカップルとして静かに、穏やかに終末を迎える事が出来ていたのではないだろうか。

 

だが、たらればを語ったところで何も事態は変わらず。そして、日和の前には一つ、世界の行く末と同じくらい重要なのっぴきならない問題が待っていた。それは深春の幼馴染の存在、卜部という問題である。

 

幼馴染だから。自分よりも心が通じ合っているように見えるから。対し、自分はどうか。天命評議会なんて言う組織のトップであるせいで深春との距離は遠く、だから彼女であるという自分にどうしても自信が持てなくて。

 

「あんな子と・・・・・・深春くんは、ずっと一緒にいたんだね。小さいときから、ずっと・・・・・・」

 

思わずこぼれ出た不安は更に自分の心を揺らし。自分には何があるのかと彼女の心を苛んで。

 

「もう誰も、そんな理想が実現するなんて、本気で思ってないよ?」

 

「わたしたちは―――別に、何も変わらないもの」

 

深春もまた、明かされた天命評議会の新たな一員の告白に心揺らされる中、日和は一人、自問自答の闇の中へと迷い込む。

 

だがしかし、全てを諦めてしまいそうになったその時。日和は気付く。自分の命はもう、自分一人の命ではないのだと。自分が死んだら困る人だっている。何より深春が悲しむ。だからこそ、死ねないと。

 

「それでも・・・・・・いいかな?」

 

やっと気付いた本当の気持ち。幾ら言葉で取り繕っても彼の事が好き、決して誰にも譲りたくない。だから、どこまでも一緒にいてほしいと。

 

本音でぶつかり合い、もう一度絆を強く結び直して。だが、本分の中で日和は預言される。十二万もの命を奪う選択肢を取る事になると。

 

果たして、間違いなく大量殺人者の重荷を背負う事になるだろうその時。本当の意味でまだ、分かっていない深春はどうするのか。

 

前巻を楽しまれた読者様、是非読んでみてほしい。募る不穏の予感に心揺らされる事間違いない筈である。

 

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