読書感想:今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。3 3年分の「ありがとう」だよ、先輩

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前巻感想はこちら↓

https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/06/28/233832

 

この巻の感想を読まれる前、そしてこの巻を読む前に。画面の前の読者の皆様の中でこの作品を読了されている方はご注意願いたい。この巻は、正に容赦がない。作者である涼暮先生の容赦のない一撃が主人公である伊織にも、私達読者にも繰り出される巻だからである。

 

では、まずは今巻のあらすじを見ていきたい。そして、そこに記されている言葉を全て覚えていてほしい。(以下、あらすじ)

 

――伊織先輩は、私のことなんて、早めに忘れてしまってほしい

生原小織。怪しげな露天商ナナさんの店でバイトをしている、正体不明・詳細不明・神出鬼没の後輩……のはずだった。そんな彼女が、病院で眠り続ける「思い出せない僕の親友」と同じ名前・顔をしているという。この不可思議な状況、「生原小織」は間違いなく《星の涙》を使っている、はずだ。
「私の――生原小織の願いを否定してほしいんだ」
僕は何もかもを忘れてしまっていた。「生原小織」の素顔、口調、性格、彼女と僕の関係。彼女が何を想い、何を願って《星の涙》に縋ってしまったのか。それら全てに、全ての感情に蓋をしてきたのだ。そして――そもそも対価を払ったのは誰だったのか、ということにも。

 

生原小織。後輩である筈の彼女は、眠り続けていた伊織の親友とまるで同一人物であると言わんばかりに、同じ特徴を有していた。

 

「星の涙」。その願いの対価を止める為、伊織は小織に引き込まれ、眠り続ける彼女の夢の世界へと飛び込んでいく。

 

そこは、彼女自身の記憶によって構成された、伊織が知らぬ彼女との記憶が溢れる世界。だけど、いつか夢は覚めなければいけないもの。だからこそ、願いを否定し、彼女を目覚めさせる事こそ必要な事。

 

だがしかし、何かを忘れてはいないだろうか。「星の涙」、かの謎の力には必ず対価が伴う事を。では、対価は何か。それは、「彼女」の消失。今まで共に過ごし、思い出を積み重ねてきた彼女がいなくなってしまう、救いのない対価。

 

「―――伊織先輩は、私のことなんて、早めに忘れてしまってほしい」

 

だが、それでも小織は終わらせる事を願った。ただ、大好き。その想いだけを抱いて叶えたかった。だけど、それでも。それしかなかった。奇跡みたいな一手なんて存在はしなかった。

 

「―――僕はお前を忘れない。星の涙が全てを戻しても、今度こそ僕は、僕だけは、お前のことを覚えている。絶対に死ぬまで忘れない。お前がいたことを―――何があっても!」

 

だから、自分だけは覚えている。必死に伊織は叫び、小織の願いに基づき最後の一歩を踏み出す。・・・だが、全てはそこで終わらなかった。終わってはくれなかった。

 

そして――そもそも対価を払ったのは誰だったのか、ということにも。

 

そう、本当に願ったのは誰か。本当に対価を払ってしまったのは誰か。

 

「―――もう答えは出ているんじゃないか?」

 

「おめでとう。ようやく、真実を知るときが来たんだよ」

 

 

全ての真実が明らかとなる時、この作品の舞台と根幹は完膚なきまでに破壊され、全ては無の彼方へと消え。そして、全ては否定される。

 

 

ここまで進んできたこの道が、すべて本当は必要のない道だとしたら。

 

 

どうかこのシリーズを読まれている画面の前の読者の皆様、覚悟を以て読んでほしい。きっと貴方も、心を殺される筈である。

 

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