前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/06/27/000430
さて、前巻の感想で私は主人公であるノエルの悪辣さをこれでもかと書いた事は前巻の記事を見ていただければ分かるものとして。果たして、今巻では少しはノエルは自重というものを覚えたのであろうか。答えは否。それどころか寧ろ、もっと悪辣さを増してヤクザどころの騒ぎではなくなっているのが今巻である。
前巻でコウガという強力な仲間を手に入れ、更に戦力を増したノエル達。
そんな頃、深度八という強力無比な悪魔、魔眼の狒狒王が現れ手柄を上げんとする探索者達の注目の的となり、討伐へ向けて探索者達が動き出す。
が、それでノエルが普通に皆と歩調を合わせるかと思った画面の前の読者の皆様、そんなに彼は甘くはない。
そんな綺麗事は捨てておけと言わんばかりに、最低限の負担で最高の戦果を挙げるべく、ノエルは策を巡らし実行する。してしまった。
クラン創設に慎重な動きを示しながらも、強力な面々が揃う実力者揃いのクラン、天翼騎士団。
が、そんな彼等もノエルに目を付けられ一度絡められたのならば運の尽き。
見事に自分達の土俵に引っ張り込んで魔眼の狒狒王討伐の勝負を持ち掛け。同時に内部不和の種をばら撒き瓦解の為の策を仕掛け。
「天翼騎士団の皆さん、ここまでの露払いご苦労様」
死闘の場、策が成り瓦解した彼等の前で頭を下げて見せ、漁夫の利とばかりに美味しい所をかっさらい。
「さて、レオン。ビジネスの話をしようか」
そして何もかも失ったリーダー、レオンの背中を蹴り飛ばすように激励の言葉をかけ。
更に、彼を仲間に加えたかと思えば、最強クランの一角、「人魚の鎮魂歌」のマスター、ヨハンに討論会を仕掛けたかと思えば、大衆を味方につけ囚われの人形師、ヒューゴの無実を訴えて。
「あの時は、一歩下がった。それが今は二歩だ。このまま、おまえはどこまで下がるつもりだ? おまえほどの漢が、そうやって怖気づいたまま終わるつもりか?」
トドメにヒューゴの冤罪事件の黒幕を庇おうとしたフィノッキオを説き伏せ墜とし、彼を助け出す為に監獄すら爆炎の中に落とす。
正に、その様は蛇。一度絡みついたのならば離さず締め上げ砕き、気が付けば詰んだ状況の中で飲み込まれる。
まるで某火星の子供達の会社のように、最短距離で。だが決してへまをせず全てを掌の上で踊らせ最高の利益を得ていく。
前巻にも増して、悪まっしぐら。最早主人公ではなく敵のボスが行うが如き所業。
だが、だからこそ面白いのかもしれない。
前巻を楽しまれた読者様、やはり普通のファンタジーとは一味違う作品を読みたい読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。