読書感想:婚約破棄されてから聖女の力が覚醒したようです 1

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は少女小説なるジャンルの小説を読まれたことはあられるであろうか。普通のラノベよりも、より先鋭的に、より深みのある面白さがある、そんな少女小説の世界に触れられた事はあられるであろうか。

 

何故こんな話を最初にしたのか。その答えは簡単、この作品がそんな感じの作品だからである。実にweb小説原作的な題名を冠しているこの作品の根底にあるのが作者様の趣味である少女小説だからである。

 

では少女小説によくある事とは何だろうか。それは主人公が同時にヒロインであり、王子様であるお相手が必ず存在するという事である。

 

この作品における主人公兼ヒロインである貴族の令嬢、エミリー(表紙)。彼女は聖女とこの先なる預言を受け、習わしにより自分が住んでいる国の王太子、リオンと婚約を結んだ。

 

ではその彼、リオンが王子様・・・かと言うとそうではない。この作品の題名を見れば、一目瞭然である。

 

それもその筈。彼女に聖女の力が目覚めたのは偽の聖女と蔑まれ婚約破棄され、投獄されてからである。そして婚約者であった王太子、リオンは彼にべったりの令嬢、ジェニファーと婚約を結ぶ。

 

だがしかし。彼女こそが偽物の聖女であり、彼女は己の望みを叶える為、悪魔と契約を交わした悪に身を墜とした存在だったのである。

 

そして、投獄されてもエミリーには頼れる味方がいた。それは自らの父であるクラスト、自らのメイドであるスピカ。そして異国から来た謎の少年、マルス

 

例えそれが国家に弓引く行為だと言われようが、クラストは娘を傷つけたリオンをぶん殴り、怒りに燃えるスピカはリオンを蹴り飛ばし。

 

「・・・・・・彼女はぼくのものだ。また彼女に近づいてみろ・・・・・・万一処刑をまぬがれたとしても、生まれてきたことを後悔するような地獄の苦しみを与えてやろう」

 

処刑される寸前、竜達と共に自らの正体を颯爽と明かしたマルスは死神の微笑でリオンに宣告する。

 

「結論を言えば・・・・・・謎、ですわね」

 

そして、まるで力ではなく心で聖女だと示すかの如く。エミリーはジェニファーを窮地から救う。自分を陥れた相手であるのに、自分でも自分の心が分からないのに。

 

そう、この作品の誰もが本質的な意味での悪ではない。確かに悪い事をしている者だっている。だが、その者達にだって必ず悪い理由がある。そして語られぬ事も多いその根源を、これでもかと暴き出し克明に記す。

 

だからこそ、この作品は記号的な所を逸脱し何処までも真っ直ぐであり。誰も彼もが舞台で踊る人形ではなく、必死に生きている「人間」なのである。

 

だから面白い。胸を張ってそう言いたい。

 

「世界中の誰よりも、ぼくは貴方に恋焦がれております」

 

永きプロローグは終わり、ようやく本当の意味で、お楽しみはここから。

 

少女小説的な作品が好きな読者様、バトルなファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと満足できるはずである。

 

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