前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/04/14/225805
さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。付き合ってまず初めにする事、ラブコメ編と言えば何であろうか。ファースト・キスかそれとももっと進んだ恋のABCか。否、まずはデートである。今の世の現実は違うのかもしれないが、とりあえずはラブコメと言えばデートである。そう考える読者様はどれほどおられるだろうか。
そんな四方山話はさておいて、黒矢君と白森さんは付き合い始めて一か月である。但し二人のお付き合いは、まだお試し期間である。
だがしかし、付き合っているのは確かである。そんな訳で白森さんからデートに誘われ、黒矢君が緊張の初デートに臨むのが今巻である。
いつもの部室で、ちょっぴりえっちな小説を白森さんに音読してもらうという一種の羞恥プレイを思いもかけずしてしまったり。
右京先輩と言うちょっと怖めそうな先輩に絡まれたかと思えば、親友との縁結びをお願いされてなし崩しに引き受けたり。
そんな少しずつ何かが進む予感のする日々の先、二人だけの時間である初デートがこれでもかと緻密に描かれ、そんな中で二人はお互い、今まで見た事の無い部分を知っていく。
「私達、もう付き合ってるんだから、くっつくのに口実なんていらないでしょ?」
見た事の無い私服姿にときめいた黒矢君に電車の中、小悪魔的に距離を詰めた白森さんにからかわれたり。
本屋に寄って思わず心境を吐きそうになったり、服屋で感想を求められて困ってしまったり。
そんな中、妹との邂逅を切っ掛けに自分の複雑な家庭環境を語り、心惑い揺らし、不意に弱い所を見せてしまう白森さんを黒矢君はどうしたか。
「くっつきたいときは、いつでもくっついていいんですよね?」
その答えは一歩踏み出した勇気の先、大丈夫だと抱きしめる男らしい行動。
「俺が好きな作品のこと、それ以上悪く言わないでくださいよ」
そして、自分の事を悪く言うのは例え貴方であっても許さない。静かに告げて、自分は好きだと真っ直ぐに伝える、勇気と想いを込めた率直な言葉なのだ。
初デート、雨降る後は、笑い顔。弱い所もいつもと違う所も全部見せて。静かに絆を深めていく二人に迫るのはすれ違いの予感。
あの一児の母にして幼馴染の大学生とラブコメ繰り広げているママとも世界が繋がり更に世界は広がる中、静かにすれ違いの目は蒔かれる。
だからきっと、ここからなのだ。本当の意味で、その絆が確かなものかを問われるのは。
前巻を楽しまれた読者様、ラブコメが好きな読者様は是非読んでみてほしい。きっと満足できるはずである。