さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は過去の人生に残してきた悔いはあられるだろうか。何かやり直したい、あそこでああすりゃ良かった。そんな後悔がもしやり直せるとしたら、貴方はその誘いに乗られるだろうか。
冴えない二十七歳、新卒五年目のサラリーマン。下野。彼には頭の上がらない相手がいた。
その相手とは、自分の一個上であるにも関わらず課長に抜擢された秀才、透花(表紙)である。
実は同じ高校だった。だが透花は生徒会長という高嶺の花。下野は普通の一般生徒。
お互いがお互いに秘密裡に惹かれていたにも関わらず、距離を詰める機会が無くて。結局この年齢まで来てしまった。
そんな二人がまさかの事態に巻き込まれる、それは何を隠そうタイムリープである。
下野が高一、透花が高二。およそ十一年前の世界へ、未来の記憶を持ったままに巻き戻った二人。
そんな二人はお互い共にタイムリープしているとは露知らず。勇気を出して話しかけようとした下野へ、透花は心隠さずデレを前面に出して彼へ接近を試みる。
「破壊しているのはこの頭よ!」
「なおさらやめてください!」
が、やはり違和感はぬぐえず。ひょんな事からお互いの状況に気付いた二人は、思わず悶絶する程に慌ててしまう。
そんな二人を待っていたのは「タイムスリップ」ではなく「タイムリープ」した世界である。
そう、タイムリープである。過去のやり直しそのままであるタイムスリップではなく、タイムリープなのである。
だから、この世界は何処か違う。下野の親友が起こした高校デビューの時期も違うし、幼馴染の身体的特徴も何かが違う。
そんな何処か同じで何処か違う。ちょっとおかしなその世界で。
少しずつ、あの日とは違う日常を始める下野と透花の二人。
ある時は高校生らしい場所に行ってみたり。またある時は、大学生と高校生の姉弟として将来勤める筈の会社に潜り込んで、知っている人達の過去の姿に遭遇したり。
そして二人を待ち受けていたのは、あの日も繰り広げられた生徒会長選挙。巻き起ころうとする、まるであの日を繰り返すかのような騒動。
「今から辰城と林先生をぶっ飛ばします」
だが、あの日とは違う。もう見ているだけの自分ではない。過去を変える為の勇気は、もう心の中にある。
ああ素晴らしき両片思い。と言わんばかりの両片思い特有のじれったくてこそばゆくて甘いラブコメにタイムリープというスパイスを絡め、そこにやり直しという一種の独特の味を絡める。
その果てに生まれたのがこの作品であり、魅力的な登場人物揃いという事もあってレベルの高い面白さのある作品なのである。
両片思いの独特の面白さが好きな読者様、ラブコメ好きな読者様、過去に何か後悔がある読者様にはお勧めしたい。
きっと満足できるはずである。