前巻感想はこちら↓
恋とは落ちるもの、いつの間にか落ちているものだと誰かが言った。では、彼女達の今は未だ名もなく何にも分類されない感情は、今巻では一体どうなっていくのだろうか。
二人が再会した春が終わり、夏が巡り。そして新学期、秋が来る。
だが巡り来る秋は、陽南と佑月が離ればなれとなってしまう季節。何故なら寮の準備が整ってしまうから。
そして陽南の心の中には迷いがあった。それは何か。その答えは未だ出ていない。だけど迷いの表題的な題名はもう既についている。
それは佑月の「好き」という想いと、自分の「好き」という想いは果たして同じであるかという事。自分はどういう意味で、佑月の事が好きなんだろうという迷い。
その迷いの正体も分からず、自分の想いに答えを出せぬまま巡り来た最後の夜。二人同じ寝具に潜り込んで過ごす最後の時間、遊びのつもりで抱き着いた彼女の背中。感じたのはとても熱くて、とても速くて、そしてとても強い鼓動。
ただただ驚いた、彼女の鼓動の強さに。この瞬間、本当の意味で陽南は自覚したのかもしれない、彼女の想いを。
何故こんなにも寂しいのか。何故自分の顔を見られずに安心しているのか。
迷い揺れる彼女の心。だがしかし、神様はまだ試練が足りぬと言わんばかりに彼女の心を揺らす風を強くする。
二学期、この学校に伝わる伝統。互いのネクタイか互いのリボンを交換するというよく分からぬ行事。
だが陽南は、佑月がそれを見知らぬ女子生徒と行っているのを目撃してしまう。
彼女の好きは何だったのか? まさか返事を待つ間に冷めてしまったのか?
知らぬ佑月の顔を見る度よぎる不安。それは来るべき学園祭を前にして、すれ違いを生んでしまう。
答は何も分からず、本当にこの想いは好きという想いなのかと悩んで立ち止まって。
そんな彼女を救うのは誰か。それはやはり、佑月であり彼女の仲間達なのである。
「いいかい、これは魔法だ。・・・・・・ヒーニャは知ってるよね? あたし、気に入った人には魔法を見せるんだって」
自分のクラスの出し物にだけ熱中して、星楽部の出し物なんてどうでも良くなったと思っていた。
だけど佑月はきちんと考え、そして二人だけの思い出をたくさん込めていた。
それに気付けず逃げてしまった陽南へ、言えぬ想いを抱えた飛和が魔法をかける。
空を舞い、拾い集めたハートのエース。それはあの日、確かに自分の心の中にあったもの。そして今、形を取り戻そうとしているもの。
「・・・・・・だってわたし、好きになっちゃったんだよ。佑月のこと」
形を成したその想い、それは他の人の「好き」とは違うかもしれない。だが、確かにそれは「好き」という感情なのだ。忘れていいと言われても、忘れる事の出来ぬ彼女だけの形を持った確かな想いだ。
抑えきれぬ想いを受け止めあい、お互いの心の間を流れていた天の川を越えてようやくその手は繋がって。
「付き合おう、・・・・・・私たち」
ようやく確かめられた好きの想い。だけどこれは終わりではない。寧ろここから始まるのだ。
前巻を楽しまれた読者様、耽美し愛でるかのような巨大な感情がぶつかり合って交じり合うガールズラブコメが好きな読者様。どうか、読んでみてほしい。
そして私は、敢えてこう言いたい。
show must go on.
お楽しみは、きっとここから。