前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/01/30/235555
さて、自殺とは罪か否か。画面の前の読者の皆様はどう思われるであろうか。自らの命を絶つのは犯罪か否か。一先ず言える事は一つ。この作品の裁きのシステムにおいて、自殺は特筆すべき事情が無ければ、地獄へ送られるという事である。
自分が死んだら泣いてくれる人はいるのか。そんな事を確かめる為に無意味に命を落とした少年がいて。自殺した男の下敷きになって不本意ながらも死んでしまった女の子がいて。
ではそんな者達を地獄の刑吏達は救う事は出来るのか。その答えは、否。例え特別な武器を持たせて貰えても、その身に人外な力を宿していても。既に死した者達の運命を覆す事は出来はしない。
ならばそんな刑吏達に出来る事は何か。それは、自殺の原因となった者達がいるのなら、その者達が地獄へ来た時、それ相応の罰を与える事だけ。それぞれ罪を背負い、地獄に堕ちてきた者達を裁く事のみ。
死ぬ覚悟もないのに自らの命を賭けて脅迫電話をした者。
人に悲しみを齎す転売犯。
嫌いな相手が人気なのが許せない、ただそれだけの理由で誰かを傷つけた者。
そして一度手放した自らの子に執着し、子の幸せを奪った毒親。
今の時代を写す鏡であるかのように、今の時代だからこその罪を背負った者達が地獄へと堕ちてくる。
だがしかし、地獄へ堕ちたからこそ出会った者達もいる。三界の壁に阻まれながらも芽生えた想いがある。
勉強し続ける刑を受けた少年兵と、自ら地獄へ堕ちてきた少年は出会い友となる。それは現世では決して芽生える事は無かったであろう友情。
煉獄で三十年の刑を科された青年が、天国で聖女と呼ばれる女性と出会い、その心を解かす言葉を考える決意をする。
確かに彼等のいる世界は、我々がいる現世ではない世界である。しかしそこでこそ芽生える感情があるのも確かであり、どんな世界でも人は変わっていけるという事もまた教えられるのである。
だがしかし、忘れてはいけない。罪を重ねて悪となれば、彼等がいる地獄へと送られ、地獄の最奥、世界の深淵にあるのは決して覗いてはいけない真実なのだ。だからこそ、我々は真面目に生きていくのが一番な筈である。
前巻を読まれた読者様は、是非読んでみてほしい。前巻にも増して深まり広がっていく、独特の世界観に裏打ちされた地獄でのシュールで仄暗いホラーが楽しめる筈である。