読書感想:好きで鈍器は持ちません! ~鍛治と建築を極めた少女は、デカいハンマーで成り上がる~

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問:ハンマーと言えば?

 

答:スタン要員(MH脳な真白優樹である)

 

さて、そんな訳でこの作品の主人公、ハンナ(表紙)が抱えているのはデカいハンマーである。ファンタジー世界の主人公の武器としては意外といないタイプかもしれない武器、ハンマー。しかしその武器を使用するにはとある理由があった。

 

何故なら、彼女は剣も魔法杖も他のどんな武器も何もかも。一切使いこなす事の出来ぬ落ちこぼれだったからである。

 

育ての母親に憧れて冒険者になりたかったのに、肝心の武器を使う事が出来ずに冒険者になる為の学校を退学となり。その先に宛てもなく彷徨い行き倒れて。拾われた先で出会ったのは、自分に唯一合う武器だったハンマー。

 

しかし、この世界ではハンマーは邪神の武器として忌み嫌われるものであった。だけど、ハンナにハンマーの使い方を教えてくれた大工さんや工事現場の人達は良い人ばかりで。だからこそ彼女はハンマーを片手に、異端であっても冒険者となる事を志す。

 

そう、彼女は諦めていなかった。どんな場所でも境遇でも。持ち合わせたハンマーの似合う、江戸っ子的な性分は失われていなかった。

 

どこまでも前向きな彼女の手に、相棒となるハンマーが合わさる時。そこから始まるのは今まで自分を馬鹿にしていた者達をこれでもかと見返す、無双の蹂躙劇。

 

かつての級友、ダークエルフのローゼリアを見返してその心にほんの少しの変化を生じさせ。

 

虐げられる薬剤店の店主、ミラの心を救い、魔物へと変じてしまう少女、ガレをそのハンマーで助けて見せ。

 

そして、愚かなる正義に囚われたかつての首席、セシルを圧倒的な力で武器も心も砕いて勝利を収める。

 

「あたぼーです! 私の鈍器を舐めないでください!」

 

そう、ハンマーとは、鈍器とは。ぶっ壊すだけではなく何かを再生させる事もできるもの。破壊と再生、それこそが創造の本質。この作品は、理不尽な正義も世の中も。何もかもその細腕から振るうハンマーでぶっ壊し絆を結んでいく少女の活躍譚である。同時に、若干昏めな世界の中でちゃっきちゃきの江戸っ子な少女が明るく進んでいくからこそ面白い作品なのである。

 

良くも悪くもなろう系。言ってしまえばそうかもしれない。だけど、だからこそそういう面白さは確実にあり、可愛い女の子達が大活躍するからこそ花がある作品なのである。

 

どこか百合っぽいファンタジーが好きな読者様。逆境からの圧倒的な無双が齎す爽快感が好きな読者様は是非。きっと満足できるはずである。

 

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