読書感想:夢見る男子は現実主義者2

f:id:yuukimasiro:20200830170111j:plain

 

前巻感想はこちら↓

https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/06/02/230841

 

百年の恋が覚め現実に還る。そんな言わば終わった恋から始まるある意味異色ともいえるこの作品。前巻の最後、いきなりの愛華からの申し出からこの作品はどんな方向へと進んでいくのか。楽しみであった読者様も数多くおられたに違いない。

 

が、しかし。一言で言ってしまえば、今巻もまるで変化が無いというのか、何も始まらない。芽吹いたラブコメの芽はまだ、伸びるどころかまだ天を向いたばかりだ。

 

だが、面白い。それは何故か。何故ならば、未だ芽は伸びずとも、これでもかとラブコメへの肥料は投入され、それが全て蓄えられて行っているのが明確にわかるからである。

 

前巻の最後からの続き、家に招いたら妹が渉に懐いてしまったり。

 

そうかと思えば、風邪を引いた渉の今までに見たことのない顔にどこか胸が痛くなったり。

 

(よかった・・・・・・―――って、何で私こんなに心配してんのよ!)

 

まるで家族のように渉を心配してしまったり、自分が隣にいない中安心した渉を見て何故かモヤっとしてしまったり。

 

そんな揺れ動く愛華の感情を知らず、渉は今まで行ってこなかった様々な事へと手を出していく。

 

ある時は勧誘、ある時はバイト。

 

今まで一人しか見てこなかった視線を周りに向けて、一人にしか向けてこなかった思いを周りに開いて。

 

そんな彼に興味を抱き、あるいは見直し。彼の周りには徐々に人の輪が出来ていく。

 

しかし、愛華と渉は未だ境界線上の平行線。近づいたり離れたり、分からぬ気持ちを揺らしながらもやもやの正体に感づけなくて戸惑って。

 

物語の本当の始まりの扉は未だ開いていないかもしれない。だけど、いつか開く日を待っている。

 

もだもだしてても、もどかしくても。こそばゆくて何処か甘い恋路を二歩進んで三歩戻りながら。だけど確かに、変化への扉が開かれるのが今巻なのである。

 

戸惑い揺れる気付かず秘めた恋心。これが炸裂する日を画面の前の読者の皆様も楽しみに思えてこないだろうか。そのもどかしさを楽しんでみたいと思われないだろうか。

 

少しずつ意識して、少しずつ今まで見てこなかった彼へと目を向けて。

 

進んでいないように見えて実は開花への澱は確かに少しずつでも積もってゆく。

 

前巻を楽しまれた読者様は喜んでほしい。既に三巻の発売は決定しているらしい。

 

だからこそ今、全てのラブコメ好きの読者様に読んでみてほしい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

 

https://www.amazon.co.jp/dp/product/4798622893/ref=as_li_tf_tl?camp=247&creative=1211&creativeASIN=4798622893&ie=UTF8&linkCode=as2&tag=bookmeter_book_middle_detail_pc_login-22