読書感想:いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はラノベ作家という職業についてどんな印象を抱かれているだろうか。夢がある職業だと思われるだろうか、それとも地獄のような仕事であると思われるだろうか。

 

ある所に二人の少年がいた。片方の少年の名前は海人。毒親である父親から妹を、仮定を守りながらアルバイトに明け暮れ、将来の事なんて見えていない灰色の世界の中に生きてきた少年。もう一人の少年の名前は浩太。恵まれた環境の中で生きてきた、虹色の日々の中を生きる少年。

 

出会う筈のない、交差するはずのない二人の人生の道。だが二人の道は交わった、文芸部部長の先輩、朱音(表紙)の手によって。

 

プロデビュー出来たのならば結婚してあげる。そう言われて二人は文芸部へと入部し、web小説という創作の世界へと足を踏み入れる。

 

 

そこに広がっていたのは未知なる世界。顔も知らぬ好敵手達と、隣にいる好敵手達と切磋琢磨しぶつかり合い磨き合う闘争の世界。

 

海人は知った。灰色の世界もふとしたきっかけによって色付くという事を。

 

浩太は知った。与えられるだけではつかめない世界、自分しか頼りに出来ぬ世界があるという事を。

 

互いにぶつかり合い切磋琢磨し磨き合う。二人の輝かしき日々は唐突に終わってしまう。あの憎き親の手によって。だけど、一度灯った光は簡単には消えない。物語が誰かの心の中に届いているからこそ、その光が自分に帰ってきて背を押す原動力となるのだ。

 

「書くよ。俺は―――生きたいから小説を書くよ」

 

名も知らぬ、声も知らぬ。だけど月日が経っていても待っててくれている人達がいた。彼等皆がいたからこそ気付けた。自分の生きるべき世界を。自分が書いていくべき作品を。

 

生きていく道は離れたとしても、創作の道の上に二人はいて。時が経ち、あの日自分の後ろを行く彼に追い越されたとしても、ここからが逆襲の物語の始まりだと再び立ち上がって歩き出して。

 

創作とは地獄だ、戦場だ。誰をも飲み込む可能性のある深き沼であり、誰しもが主役となれる物語が生まれる未知なる世界なのだ。

 

そんな叫びと呼びかけが込められたこの作品は、正に創作のお話である。生々しくて綺麗なだけではなくて、だからこそ生の熱さが溢れ出している作品なのである。

 

ブコメのような明るさもなく、どこか切なくて熱いばかりで。

 

だが、確かに作品の世界の中に引き込んでくる熱さがあって。

 

そんな作品を読んでみたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。

 

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